今宵、黒蝶を溶かして。
「光莉、その手の傷はどうした?」

「これ? 昨日、荷物を運んだときに少し擦っただけ」

「少しでも傷は傷だ」

玲央は救急箱を取りに行き、光莉の前に膝をついた。

「見せろ。手当てする」

「玲央さん、自分でできるよ」

「俺がやる」

穏やかな声だったが、断る隙のない言い方だった。

玲央が包帯を巻いている間、冬真はすぐ隣でじっと見ている。

「玲央、強く巻くな」

「分かっている」

「光莉が痛がったら――」

「冬真」

玲央が顔を上げた。

「お前は少し黙っていろ」

アジトに、静かな沈黙が落ちる。

その様子を見ていた伊織が、くすりと笑った。

「ふたりとも、光莉ちゃんのことになると余裕がなくなるね」

伊織はテーブルの上に、温かい飲み物を置いた。

「光莉ちゃんにはこれ。昨日、少し顔色が悪かったから」

「ありがとう、伊織さん」

光莉が笑うと、伊織の目が細くなる。

「……その笑顔、いいね」

「え?」

「もっと見せて。僕たちが守る価値があるって、ちゃんと分かるから」

その言葉に、冬真の表情が一気に険しくなった。
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