今宵、黒蝶を溶かして。
「伊織」

「冗談じゃないよ」

伊織は微笑んだまま、光莉を見つめる。

「光莉ちゃんがここに来てから、アジトの空気が変わった。だから、もう簡単には手放せない」

迅も腕を組み、真剣な顔でうなずいた。

「俺も同じだな」

いつもの明るさが消え、まっすぐ光莉を見る。

「最初は冬真の大事な幼なじみってだけだった。でも今は、光莉ちゃんが泣いてるとムカつく。誰かに傷つけられたって聞いたら、そいつを許せねぇ」

「迅……」

「だから、何かあったら絶対に俺たちに言え」

蓮司も、いつもの軽い笑みを消していた。

「光莉ちゃんがこの場所からいなくなるの、想像したら嫌だな」

「蓮司くんまで……」

「俺たち、もう光莉ちゃんがいるのに慣れちゃったんだよ」

蓮司は困ったように笑った。

「朝、光莉ちゃんの声が聞こえないと落ち着かない。食事の席にいないと、何かあったのかって気になる」

玲央が静かに続ける。

「黒蝶に来た以上、お前は俺たちの守るべき仲間だ」

そして冬真は、光莉の肩を抱き寄せた。

「仲間だけじゃない」

低い声に、全員の視線が集まる。

冬真は光莉だけを見ていた。
< 20 / 25 >

この作品をシェア

pagetop