今宵、黒蝶を溶かして。
「光莉は、俺にとって特別だ」

「冬真くん……」

「誰にも渡さない」

その言葉に、幹部たちが一斉に反応する。

「おいおい、総長だけ独占はずるくねぇか?」

迅が笑う。

「俺たちだって、もう光莉ちゃんを守りたいと思ってる」

玲央も静かにうなずいた。

「異論はない」

「僕も」

伊織が穏やかに微笑む。

蓮司は肩をすくめた。

「つまり、光莉ちゃんは黒蝶全員の大事なお姫様ってことだな」

光莉は戸惑いながらも、胸の奥が温かくなるのを感じていた。

親に見捨てられた夜には、誰にも必要とされていないと思っていた。

けれど今は違う。

冬真がいて、玲央がいて、迅がいて、伊織がいて、蓮司がいる。

その全員が、自分を失いたくないと思ってくれている。

ただし――。

「光莉、今日は俺の隣で寝ろ」

「えっ?」

冬真が当然のように告げた。

「一人で眠るのは不安だろ」

「でも、私の部屋も隣にあるし……」

「隣でも離れている」

「総長、それは過保護っていうより独占欲だろ!」

蓮司のツッコミが響く。

冬真は眉ひとつ動かさず、光莉の手を握った。

「何か問題があるか」

「ありすぎる!」

迅が叫び、玲央は深いため息をついた。

伊織だけが楽しそうに笑っている。

「でも、光莉ちゃんが嫌じゃないならいいんじゃないかな」

全員の視線が光莉に集まる。

光莉は顔を赤くしながら、冬真の手を握り返した。

「……冬真くんが、そばにいてくれるなら」

冬真の瞳が、甘く細められる。

「分かった。ずっとそばにいる」

その瞬間、幹部たちは悟った。

自分たちはもう、光莉をただの総長の幼なじみとは思っていない。

彼女が笑えば嬉しい。
泣けば苦しい。
傷つけるものがあれば、許せない。

黒蝶の冷たい世界に現れた、ひとりの少女。

その存在は、総長だけでなく、幹部たちの心までも少しずつ変えていた。

そして彼らはまだ知らなかった。

この執着が、やがて黒蝶全体を揺るがすほど強くなることを。
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