ちいさな世界に恋をして、

バッグから水筒と消毒液を取り出して、傷が深そうなところから順に水をかけていく。

「え!?ちょっ、」

「いたいですか?」

「だっ、大丈夫…です……」

「そうですか。じゃあ、つづけますね」

「………」

「………あっ!」

「うん?」

「たりません……」

「足りない?」

されるがままになっている彼女に、バッグから追加で取り出したものを見せる。

「ばんそうこう、これだけしかなくて」

「え?えーっと、貼らなくていいよ!これなら、」
「でも、"女はきずを作っちゃダメ"って。おかあさんが」

「………」

「だから、早く治すためにも、ちゃんとはらないとです」

「………」

「……お姉さん?」

当たり前のことを言っただけなのに、笑顔がどんどん曇っていく彼女は、なにがそんなに不安なんだろう。


"大丈夫だから!"と繰り返すから、それ以上何も言えなくて。手持ちの絆創膏をすべて貼ってから、その場に並んで座り込む。

さて、ここからどうしたものか。
大変なときは、とりあえずお腹を満たすのが一番かな。

もう一度バッグに手を突っ込んで、お母さんが握ってくれたおにぎりを彼女の目の前に差し出す。

「うめとこんぶです」

「いや、私はいいよ」

「よくないです。すきな方どうぞ」

「えっ、じゃあ……こっちで」

「どうぞ」

「ありがとう……」

「いえ」

「………」

「………」

散策中に事件が起こることは、今まで一度もなかったから、

……なんだかとっても、ワクワクする。


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