浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
シャルロットは壁際からその姿を見つめた。胸の奥が騒ぐ。
また、ひと回り逞ましくなったようだ。
先ごろ王城の回廊で話しかけられた時よりもずっと、今の彼は大きくがっしりとして見えた。
「……あれに抱きついていたなんて、どうかしていたわ」
シャルロットは誰にも聞こえないほどの小声で呟く。
『聞いてちょうだいクリス!』
『ねえクリス、フェルナンド様ったらひどいのよ』
『クリス、大好きよ』
無邪気な笑顔で彼の身体に抱きついていた少し前の記憶。
あの頃、親友として触れていた身体が、今では全く異なる男性のそれとして成長したという現実に、顔が火照っていく。
クリスチャンは、瞬く間に多くの令嬢たちに取り囲まれた。その中にはリリアンナの姿もある。
彼女の自信とその押しの強さには、憤りを通り越し、感服するしかない。
洗練された微笑みを分け隔てなく返す彼を遠くから見つめながら、シャルロットの胸には、ぽっかりと穴が開いたような寂しさが広がっていく。
「やあ、シャルロット」
背後から、不意に肩を叩かれる。シャルロットは驚いて振り返った。
「まぁ、ヨハネスお兄様」
そこには、親しみやすい笑みを浮かべた背の高い男ーー七つ上の従兄妹、ヨハネス・ハイネマンが立っていた。