浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
「お前がフェルナンド様を操っていたのではないか、と疑う声が一部残っている事だ。もし財務相談役として正式に陛下のお役に立ち、この国難を乗り越えられたなら、根も葉もないお前への疑いは晴れ、名誉は回復するだろう」
父の横顔には、傷ついた娘を再び政治の表舞台に巻き込むことへの申し訳なさと、それでも娘の能力を信じる期待が混在している。
婚約破棄、そして元婚約者の国外追放劇。
娘がフェルナンドの婚約者であったというその一点において、大切な父にどれほどの心労と不名誉を負わせたことか。
きっと、この国難を救う手助けをすることは、自分だけでなくペンブローク公爵家の名誉を取り戻すための道でもあるのだ。
「わかりました、お父様。精一杯やらせていただきます」
シャルロットは背筋を伸ばし、迷いのない声で父に応えた。
*
案内されたクリスチャン王子の執務室は、かつて『クリスティーヌ王女』が静かに過ごしていたささやかな部屋とは全く違っていた。
執務机の後ろには重厚な革装丁の書物が天井まで届くほど並べられた本棚が。壁際には、広大な王国を遠く見渡せる窓がある。
「やぁロティ」
シャルロットは一歩前に進み出ると、彼との間に明確な一線を引くように、深々とお辞儀をした。
「クリスチャン殿下、この度は財務相談役としてのご指名、ありがたく存じます」
クリスチャンは何かを言いかけるように微かに唇を動かした。
しかし、シャルロットの他人のように堅苦しい挨拶を前に、諦めたようにその唇を固く結ぶ。
彼は小さく息を吐くと、自身の机へと視線を向けた。
何十冊もの分厚い帳簿や古い書類が、うずたかく積み上げられている。
「早速だけど、これが帳簿類と関係書類だ。どこからどう切り詰めるべきか悩んでいる。手伝ってほしい。まずはこれらにざっと目を通してもらえるだろうか」