浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
第6話:遠い昔
自分が女の子じゃないかもしれないだなんて、考えたこともなかった。
『可愛らしい姫』と誰もが言う。
大きくなったらマージのようにお胸が大きくなり、お母さまのようにたおやかな貴婦人になる。そう、信じて疑わなかった。
七歳のクリスティーヌは、自分と母が住まう別棟の奥庭で泣いていた。
『スンッ……くすん』
鼻をすすり、しゃくり上げるのを止められない。
最愛の母は高熱を出し、もう三日も臥せている。クリスティーヌは胸を締め付けられるような恐怖に耐えかね、庭の隅にある大きな木陰へと逃げ込んだ。
地面に膝を突き、小さな体を震わせて涙を流す。
『だいじょうぶですか?』
上から声がふってくる。
『迷子ですか? どなたか呼びに行きましょうか?』
可愛らしい女の子だ。自分より、少しだけ小さい。
『ダメ、誰も呼ばないで』
クリスティーヌは慌てて首を振った。泣いていたと知られれば、母を余計に心配させてしまう。
そう、説明したいのだが、うまく話せない。
『……っふ、お母さま……ぅぅ』
クリスティーヌはまた泣いた。
女の子はちょこんと隣に座り、クリスティーヌが泣き止むのを待った。
それが、腹違いの兄フェルナンドの婚約者、シャルロット・ペンブロークとの出会いだ。
『お母さまには元気でいてほしいですよね』そういって慰めてくれた彼女の母はもうとっくの昔に亡くなっているのだと、後から知った。
シャルロットは兄の元へ定期的に遊びに来るが、邪険にされているらしい。公爵家から迎えが来るまでの長い時間を、二人で過ごした。