浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
 城から出たことがない。友達などいない。
 クリスティーヌにとってシャルロットは唯一の友人だ。マージも、病床の母も止めなかった。
 花を摘み、蝶を追いかけ、お茶を飲む。冬になれば刺繍に編み物。
 女の子の遊びを楽しんだ。


 十歳になる頃には、いよいよ母の病状が悪くなった。
 ある日、母と父に秘密を明かされた。

 『お前は、本当は男の子なの』

 命を狙われている。だからこれからも女の子として生きなさい。それが母の遺言になった。

 自分はいたって健康なのに、病弱だと言わなければならないのはなぜなのか。
 年を追うごとに、体つきがどことなくシャルロットと違ってきていると感じるのはなぜなのか。
 理解をすれば、全てのおかしなことに合点がいった。
 その日から、首元まであるドレスを着るようになった。

 父と乳母のマージのみが秘密を知っていた。
 二人の協力の元、クリスは男子としての鍛錬、剣術や馬術をひそかに習うようになる。

 『体が弱いから』
 子供のころから通した言い訳は、案外疑われないものだ。お陰で『美しいが病弱で、風変わりな健康法を試す姫』として腫物のように扱われた。

 勉強も運動も、成果が出るとシャルロットは喜んだ。

 『すごいわクリス、そんなに剣が使えるだなんて』
 『クリスが馬に乗っていると、凛々しさが増すわね』
 『頭がいいのね、こんなに難しい歴史の本を読めるだなんて』

 甘い、蜜のようなシャルロットの言葉。自分だけに向ける陽だまりのような笑顔。
 彼女だけが、いつでもありのままの自分を肯定してくれた。

 『ずっと親友でいましょうね』
 『もちろんロティ。私たち』
 『『ずっと一緒』』

 指切りげんまんをしたのは、遠い昔。
 男であると自覚したクリスは心の中で誓った。たとえ結婚できないとしても、自分がこの手でシャルロットを一生守り抜くのだと。



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