浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
翌日、必要な資料を求めて王城の広大な回廊を歩いていたシャルロットは、図書館の前で、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「やぁロティ」
振り返ると、従兄妹のヨハネスが立っている。
「ヨハネス兄さま。どうしてこちらに?」
「陛下からのお呼び出しだ。うちが開発した水車小屋と製粉機について意見を聞きたいとね」
ヨハネスは快活に笑う。
それからシャルロットの抱える書類の束に目をとめた。
「財政相談役だって? さすが、ロティは昔から計算が早かったものな。それに領地の経営についてもよく勉強している」
見知った親族からの率直な褒め言葉に、シャルロットの心がふっと軽くなる。
ヨハネスは彼女の顔をじっと覗き込むと、その表情の変化を嬉しそうに指摘した。
「いい顔になって来たな」
「え?」
「夜会で会ったときには、幽霊みたいな顔をしていた。今は疲れは見えても生き生きとしている」
言われてみれば、そうかもしれない。
夜会の頃までは、王子様になってしまった元親友の王女に会う事を恐れ、また周囲からの心ない言葉や冷たい視線を恐れていた。
しかし、今は違う。
与えられた仕事はやりがいがあり、共に働く侍従や文官たちとの関係も良好だ。何より、自分の言葉を真剣に聞き、頼りにしてくれる国王やクリスがいる。
「そうですね、お陰様で、今は毎日が充実しています」
シャルロットが誇りを持って微笑むと、ヨハネスは満足そうに何度も頷いた。
「そう、良かった。ロティは笑っているのが一番だ」
シャルロットは、謁見室の方へと去っていくヨハネスの頼もしい背中を見送った。
ヨハネスのように、この国を立て直そうとそれぞれの立場から協力をする者たちがいる。
彼らに恥じぬよう、自分もまた精一杯職責を果たすのだと、シャルロットは静かに決意を新たにした。
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