浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
山道を登った先に広がっていたのは、想像を絶する貧しき集落だ。
掘立て小屋と言っても差し支えない程度の家がいくつも並んでいる。屋根の隙間からは今にも雨漏りがしそうだ。
生活する者のいないがらんとした空気が、余計に村の寂しさを際立たせている。
「……もっと賑やかな場所なのかと思っていました」
鉄と銅が取れる山だ。
国内の産業を回すための大事な源泉であり、このような山から採掘された鉱物が強くて華やかな富を生む。
その現場が、まさかこれほど簡素な場所であるとは想像していなかった。
公爵令嬢として生まれた自分の生活と、町民や農民の生活が異なることくらい分かっている。街や農村の視察も積極的に行っていた。しかし……。
シャルロットは生まれて初めて目の当たりにした本当の壁に、衝撃を受けた。喉の奥が乾く。
かすれた声で呟いたシャルロットの横顔を、クリスチャンが静かに見つめる。
「採掘が中断した時のまま捨て置かれているんだ。本格的に再稼働する時には、きちんと整えるよ」
言葉の端々に滲む、自身の動揺を優しく汲み取ってくれたかのような温かさに、シャルロットの冷え切っていた胸の奥がじわりと暖まる。
二人は、現地を管理する責任者の案内のもと、薄暗い坑道内へと足を踏み入れた。
奥へ進むほどに道は狭まり、壁面はひんやりとした湿り気を帯びていく。
シャルロットは、足元のぬかるみに目を配りながら、ゆっくりと歩く。
「気をつけて、ロティ」
「はい、殿下」
少し進んだだけでも真っ暗になってしまう。
数人の兵が掲げたランプがなければ一歩も進めないだろう。
「……ここが問題の箇所か」
護衛の一人がランプの光を向けた先には、天井から水滴が絶え間なく滴り落ちる場所があった。
シャルロットは頭の中で読み込んだ資料を思い出す。
鉱山を掘り進めるのに、湧き水の問題は避けて通れないと書いてあったが、これのことなのだ。