浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
「はい。今は捌けていますが、溢れでた水が溜まってしまい大惨事だったようです」
「ガルデンヒルの鉱夫たちは、水路を作ることができると?」
案内していた責任者が深く頷く。
「ええ、そのようです。深い部分へ入るほど湧き水は増えます。通常は人力で運びますが、彼らは坑道の下に横穴を掘り、水を逃すと」
「そんなことができるのか……」
「掘り方は門外不出。危険が伴う掘り方は口伝で伝えられるとのことです。なので、ガルデンヒルの鉱夫たちは集団で動きます。次の働き口が見つかるまで集団で小作をしていたのも、その技術を守るためでしょう」
シャルロットは思わず、隣にいたクリスチャンの腕に自身の手を置く。服越しにも伝わる、彼の引き締まった腕をゆすった。
「殿下、どうか鉱夫たちの安全を……」
真剣な眼差しを向けるシャルロットに対し、クリスチャンは力強く頷いた。
「彼らは大切な技術者だ。少しでも危険を減らせるよう、最大限の体制を整えよう」
「殿下、そろそろ戻りましょう」
先導する近衛兵の声が、狭い空間に反響する。
「ああ。気をつけてロティ、滑りやすいから」
「はい」
慎重に足を運ぶ。
しかし直後、シャルロットの靴底が、濡れた岩の苔を捉えて大きく滑った。
「っきゃあ!」
短い悲鳴と共に身体が大きく傾いた。
転んでしまう!
そう覚悟したが、痛みは訪れなかった。
クリスチャンが瞬時に、強い力で自らの胸へと抱き寄せたのだ。狭く暗い坑道の中で、シャルロットはクリスチャンの逞しい腕の中に収められていた。
耳元で、彼の声が低く響く。
「……ふう。大丈夫かい、ロティ?」
「も、申し訳ありません、大丈夫です……っひゃ」
慌てて身を離そうとするが、濡れた足場が再び滑り、今度は彼の厚い胸板へと正面から完全に密着する形になってしまった。
「慌てないで。ゆっくり、体勢を整えて」