浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
クリスチャンの規則正しい鼓動が、服越しにシャルロットへと伝わってくる。
至近距離からかかる彼の息が耳の裏をくすぐり、シャルロットの顔は一瞬にして沸騰したかのように熱くなった。
「大丈夫。気にしなくていい」
クリスチャンは彼女の身体を支えたまま、的確に足場を指示していく。
「そう。上からしっかり踏み締めて、そこ、右の方は乾いているよ」
何故、自分には見えない地面が彼には見えるのかわからない。
しかし、ようやく安定した岩場に両足を着けることができた。シャルロットは消え入りそうな声でお礼を言う。
「ありがとうございました、殿下」
「どういたしまして」
クリスチャンは、いつもと変わらぬ穏やかな声で応じた。
暗がりの中、数人の兵が持つ松明の明かりだけが、ゆらゆらと周囲の壁を揺らしている。
ようやく自立できたシャルロットは、自身の右手に意識を向けた。クリスチャンがしっかりと握ったまま、一向に手を離そうとしないのだ。
「……あ、あの」
シャルロットが戸惑うように視線を落とすと、クリスチャンは前方を向いたまま、その指先の力を緩めることはなかった。
「気をつけてロティ、そっちも濡れている。よく前を見て」
確かに、まだ足場は悪い。
ここでまた転んでしまったら、それこそ彼にさらなる迷惑をかけてしまう。だから、これは安全のための措置なのだ。
シャルロットは頭の中で何度も自分自身へそう言い訳を繰り返す。
分かっている。
手を振りほどくことができないのは自分の意志だ。指先から伝わってくる彼の体温の心地よさを、どうしても手放すことができない。
もう少し。
出口が近づいて、明るくなるまで。
シャルロットはクリスチャンの暖かさを感じながら、一歩一歩、ゆっくりと岩場を踏みしめた。
至近距離からかかる彼の息が耳の裏をくすぐり、シャルロットの顔は一瞬にして沸騰したかのように熱くなった。
「大丈夫。気にしなくていい」
クリスチャンは彼女の身体を支えたまま、的確に足場を指示していく。
「そう。上からしっかり踏み締めて、そこ、右の方は乾いているよ」
何故、自分には見えない地面が彼には見えるのかわからない。
しかし、ようやく安定した岩場に両足を着けることができた。シャルロットは消え入りそうな声でお礼を言う。
「ありがとうございました、殿下」
「どういたしまして」
クリスチャンは、いつもと変わらぬ穏やかな声で応じた。
暗がりの中、数人の兵が持つ松明の明かりだけが、ゆらゆらと周囲の壁を揺らしている。
ようやく自立できたシャルロットは、自身の右手に意識を向けた。クリスチャンがしっかりと握ったまま、一向に手を離そうとしないのだ。
「……あ、あの」
シャルロットが戸惑うように視線を落とすと、クリスチャンは前方を向いたまま、その指先の力を緩めることはなかった。
「気をつけてロティ、そっちも濡れている。よく前を見て」
確かに、まだ足場は悪い。
ここでまた転んでしまったら、それこそ彼にさらなる迷惑をかけてしまう。だから、これは安全のための措置なのだ。
シャルロットは頭の中で何度も自分自身へそう言い訳を繰り返す。
分かっている。
手を振りほどくことができないのは自分の意志だ。指先から伝わってくる彼の体温の心地よさを、どうしても手放すことができない。
もう少し。
出口が近づいて、明るくなるまで。
シャルロットはクリスチャンの暖かさを感じながら、一歩一歩、ゆっくりと岩場を踏みしめた。

