浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています

 『面倒だから財産管理を任せたい』

 そう切り出したのはフェルナンドだ。
 借入や歳出の多いこの国の財政状況、並びにフェルナンド王子の緩んだ経済観を憂いていたシャルロットは喜んで引き受けた。

 国を正すには、まずは彼の個人財産から。
 彼が所有する銀貨の使い道を見直す事はもちろん、借財の整理、フェルナンドが所有する土地の作物の管理に、農業技術への投資など、やるべき事は山ほどあった。
 フェルナンド自身がお金の正しい使い方を考えられるようになれば、おのずと国の財政管理にもきちんと向き合ってくれるのではないか。そう、希望を持った。

 だが、失敗したのだ。全て。

 王子の贅沢や散財をシャルロットが厳しく管理することを面白く思っていない貴族も多かったことを知っている。フェルナンドを言いくるめ、損になるような取引を持ちかける輩たちだ。
 彼らの冷たい視線が、容赦なく突き刺さった。

「クリスティーヌ王女のお出ましです」

 従僕の硬い声が響き、ざわついていた会場が一瞬で静まり返る。
 シャルロットが顔を上げると、そこには美しくも貞淑そうな、深い青のドレスに身を包んだクリスが立っていた。凛とした佇まいに、周囲の者たちが息をのむ。
 あまりの美しさに、近くにいた若い貴族のひとりが、感極まったようにその場にへたり込む。

 王妃が、扇で口元を隠しながら、面白くなさそうに鼻を鳴らした。

「あらあら、夜会になど来たことのないあなたがどんな風の吹きまわしかしら」

 クリスは王妃の嫌味をまともに受けることなく、確かな足取りで歩みを進めた。
 その鋭い視線が、王妃、そしてフェルナンドを真っ向から捉える。

「カタリナ王妃、ならびにフェルナンド王子。あなた方を国家反逆罪で捕えます」

 静かだが、会場の隅々までよく通る声が耳を抜けた。
 一瞬、クリスが何を言ったのか理解できず、その場の全員が凍りつく。

「な……何をふざけたことを!」

 フェルナンドが声を荒らげるが、クリスは動じない。懐から一通の書状を取り出し、高く掲げた。

「カタリナ王妃、あなたは出生国であるエルグレコ王国の者を手引きし、我が国の商会の馬車を襲わせましたね」
「……さあ、何のことだか」

 王妃は冷笑を浮かべるが、その扇を握る手が微かに震えている。

「とぼけても無駄です」

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