浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
 クリスは容赦なく言葉を重ねる。
 この国の者しか知らないはずの、荷馬車の通行計画書。
 彼らのために用意されたニセの通行手形。
 それらはすべて、クリスの手の中にあった。

「あなたの署名入りだ」
「ぐっ……!」

 王妃の顔から血の気が引いていく。しかし、彼女はすぐに虚勢を張るように胸をそらす。

「王の代行です。私は、床に臥せる陛下の代行をしただけよ。その者たちは悪い人間ではないわ。便宜を図ってやれと陛下に頼まれたのよ。……私を疑うことは、王を疑うも同義。国王陛下のご意志は絶対だわ!」
「ほう、では父上に確認をしましょう。父上、通行計画書の漏洩と通行手形の不正発行は父上のご指示ですか?」

 クリスの声に応じるように、会場の奥の大きな扉が左右に開かれた。

「私の指示ではない」

 扉の向こうには、長く病床にあり、死を待つばかりと言われていた国王が立っていた。やつれてはいるものの、その眼光は鋭く、かつての英明な王そのものだ。
 会場がざわめく。

「情けないことだ。妃の不正にも気付けず、ただ時間を浪費した」
「陛下、どうしてここへ……!?」
「父上、いつの間に起き上がれるほどお元気に……!」

 王妃とフェルナンドが、幽霊でも見たかのようにガタガタと震え出す。国王はふたりを冷たく見据え、深く息を吐き出した。

「お前たちが勧めてきた医者。奴の処方する薬を断ったら体調が良くなった。ああ、飲むフリだけはしておった。私の演技もなかなかだろう。……よくも私を謀ったな」

 軽やかに種明かしをすると、国王は王妃とフェルナンドを見据えながら低い声で言った。

「国王である私を毒殺しようとした罪は重い。お前たちを、国外追放と処す」

 王妃は力なく床へ崩れ落ちた。

 だが、王妃の背後に控えていた宰相が、すり寄るように前に出る。

「お待ちください、陛下」

 もみ手をしたまま、国王を上目で見上げる。

「王妃様はまだしも、フェルナンド王子まで追放するのは反対です。国家が立ち行きません。何せ、王子はお一人ですから」

 宰相の言葉に、床に膝をついていたフェルナンドの顔に、にわかに生気が戻った。
 自分が唯一の男子である以上、国を継ぐ権利は自分にしかない。だからこそ、好き勝手ができたのだ。

 歪んだ笑みを浮かべ、国王を見上げる。
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