浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
第2話:約束したじゃないか
『あーあ。あなたが王子だったら良かったのに』
フェルナンドから強くなじられた日は、決まって、シャルロットはそう溢した。
『ふふ。……私もそうだったらと、思ったことがあるわ』
たった一人の親友は、笑っていた。
『でも、クリスが王子だったらこんなに仲良くなれていないわね。私たち、女の子同士だから親友になれたんだもの。うーん、やっぱりあなたが王女で良かったわ』
男性は飽き性だ。婚約をしても結婚をしても、いつだって別の女性に気移りをする。
でも、親友ならばずっと一緒にいられる。離れることはない。
『……そうね』
そう返事をしたクリスがどんな顔をしていたか、もう、思い出せない。
*
ドレスを脱ぎ、真の姿で堂々と胸を張ったクリスは、怯む宰相とフェルナンドを鋭い眼光で射す。
「私は男だ」
その言葉が、凍りついた会場の隅々にまで響き渡る。
微塵の揺らぎもなく立つクリス。彼は床に腰を抜かしたフェルナンドと王妃に視線を向けた。
「なっ、私たちを騙していたのね」
王妃の唇が、狼狽に激しく震える。
「ええ、主にあなたを。別腹に生まれた私が男と知れれば、あなたはどんな手を使ってでも幼いうちに私を屠ろうと画策したでしょうから。そう……私の母を殺した時のように」
低く、しかし確かな重みを持った声が、王妃の胸元を突く。
彼女は顔を真っ赤にし、激昂した。
「言い掛かりはよして頂戴。あの妾は勝手に死んだのよ!」
「第二王妃だ。妾だなどと呼んでいただきたくない」
ピシャリと王妃の言葉を切り捨てるクリスの声は、まるで氷の刃だ。
彼は表情一つ変えず、懐から別の紙束と薬草の束を取り出し王妃に突きつけた。