魔力が漏れる体の辺境令嬢は、前世の調合スキルと従兄の溺愛で生きていきます
第三十三章 別の計画


第二回公聴会で、リゼットは立ったまま発表することを許されなかった。――違う。彼女自身が、医務の上限に従い、着席での発表を申し出たのだった。
計画の説明は、彼女一人では行われなかった。記録の裏付けはユリウスが、費用はミレイユが、設備はセドリックが、輪番と人員はアデルが、そして彼女は全体の設計と、最も難しい節の調律を自分が担う理由を述べた。分散の計画を、分散して発表する。そのこと自体が、ささやかな証明だった。
ローランの質問は厳しかった。
「中継器の故障率は。冬場の人員は、どう確保する。――夢の部分ではなく、数字の部分を聞かせてください」
リゼットは、分かる数字には数値で答え、分からないものは分からないと言った。「冬場の確保は、未検証です。だからこそ、期限を区切った試験を提案しています。分からないことを、大きい声で誤魔化す計画にはしません」。ローランは頷いた。彼の求めているのは、万能の答えではなく、検証の形だった。
管理官ドランは、さらに容赦がなかった。
「学生の設計に、国土の巡りを賭けるというのか。失敗の責任は、誰が取る。――机の上の輪番表で、川は止まらん」
答えたのは、アデルだった。彼女は演習と試験運転の記録を一冊、音を立てて机に置いた。
「引き継ぎの所要時間、負荷の上限超過ゼロ件、連絡途絶時の手順の実施記録。……机の上の表は、現場で三週間、検証済みです。賭けるのではありません。比べていただくための、数値があります」
ドランは記録を手に取り、しばらく黙って頁を繰った。反対のための反対ではない。この人もまた、失敗の責任の重さを知る管理者だった。
「……数値は、認める。だが本番は一度きりだ。その覚悟はあるか」
「あります」とリゼットは言った。「だから、撤退の基準も、先に決めて提出しています」
「試験の区画は」
「還流節を含む、一区画です。成否は、還流の流量と、術者の負荷の数値で判定できます」
「失敗したら」
「その前に、一つお願いがあります」とリゼットは言った。「どちらの案を採るにせよ、還流節の村の避難計画を、先に実行してください。村の人の安全を、計画の成否の人質にしてはいけません」
ローランは、しばらく彼女を見つめていた。
質疑の終わりに、彼は私的な調子で一度だけ聞いた。「中核案なら、君は一生、守られ、医療も保証された。それを断る理由が、制度の話だけとは思えない」
「……楽になるために、壊れる仕組みには乗りたくないのです」と彼女は答えた。「私が楽なほうを選んだら、次に困る誰かも、同じ仕組みに乗せられます」
「……その通りだ。避難は、院の責任で即時開始する」
審議は長く続いた。夕刻、決定が下された。
分散還流計画は、大巡りの日を期限として、試験実施が認められた。数値の基準を満たせば、本格実施へ移行する。満たせなければ――中核案を含む、あらゆる案が再検討される。
廊下に出たとき、リゼットは壁にもたれた。疲労と、安堵と、これから始まる本当の仕事の重さで、足が震えた。
仲間たちの反応は、それぞれだった。ミレイユは人目もはばからず、静かに泣いた。セドリックは天井を向いて、大きな息を吐いた。アデルはもう、出発までの手順の確認を始めていた。「泣くのは後でもできます。まず、荷物の目録を」。その実務の声に、皆が笑って、日常の側へ戻っていった。
「推薦状のことは」と、送ってきたクロードが、ぽつりと言った。「取り下げたわけではない。だが、少なくともこの件が終わるまでは、保留にした。……終わった後も、君が自分で選ぶまでは、私はここにいる」
それは、以前の「引くべきだ」という言葉とは、違う響きだった。
「……ありがとうございます。今度は、素直に受け取ります」
クロードは少し驚いた顔をして、それから微かに笑った。
実施の場所は、辺境だった。還流節のある、あの土地。チームは数日後に出発する。故郷へ帰るのだ。見学でも、療養でもなく、仕事として。
出発の前夜、厨房では小さな送別の集まりがあった。大げさなものではない。メンバーが一人ずつ、旅の道具箱に物を足していった。アデルの書き損じのない記録用紙、セドリックの小型の工具、ミレイユの乾かした花の束。「現地の食卓の匂い、嗅いできてください」。故郷へ帰る旅の荷物は、王都で得た手の分だけ、増えていた。
リゼットは窓の外の王都の灯を見ながら、調合箱の蓋にそっと触れた。


< 34 / 43 >

この作品をシェア

pagetop