恋の花火がきえる時。
その瞬間、光輝の表情からわずかに笑みが消えた。

 今日、何度も見た理紗の顔色。

 不自然な笑い方。

 胸元を押さえた仕草。

 気のせいだと思いたかった。

 けれど、光輝の中には小さな不安が残っていた。

 ――理紗は、何かを隠している。

 その夜。

 理紗は自分の部屋で、机の引き出しを開けた。

 奥には、白い薬袋と病院の予約票がしまわれている。

 理紗はそれを一度見つめてから、すぐに引き出しを閉じた。

「まだ、大丈夫……」

 誰に言うでもなく、そう呟く。

 窓の外には、夜の街が広がっていた。

 明日も学校へ行く。
 光輝と一緒に歩く。
 美咲とお昼を食べる。

 そんな普通の日々が、ずっと続くと思っていた。

 一方その頃、光輝も自分の部屋で、理紗のことを考えていた。

 机の上に置かれた携帯電話を見つめる。

 連絡をしようか迷って、結局やめた。

『今日は大丈夫だったか』

 そんな短い文章すら、送ることができない。

 不器用な自分が、嫌になる。

「……明日、ちゃんと見ておくか」

 光輝は小さく呟いた。

 理紗に気づかれないように。
 理紗を不安にさせないように。

 そのときの光輝は、ただそう思っていた。

 けれどそれは、彼が理紗の秘密へ近づいていく、最初の一歩だった。
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