恋の花火がきえる時。
光輝は何も言わなかった。
 ただ、いつもより少しだけ眉を寄せている。

「走るな」

「え?」

「今日はゆっくり歩く」

「でも、入学式に遅れちゃうよ」

「遅れない。俺がいるから」

 ぶっきらぼうな言葉だった。

 なのに理紗の胸は、病気とは違う理由で小さく高鳴った。

「……光輝がいるなら、安心だね」

 何気なくそう言うと、光輝は一瞬だけ黙った。

 桜の花びらが、彼の肩に落ちる。

「……ずっといる」

「え?」

「なんでもない」

 光輝は前を向いた。

 理紗には、その言葉の意味が分からなかった。

 ただ、隣を歩く光輝の手が、いつもより近くにあることだけが嬉しかった。
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