恋の花火がきえる時。
そのとき、教室の後ろの扉が開いた。

「理紗」

 光輝だった。

「なあに?」

「先生が呼んでる」

「私を?」

「ああ。図書室の当番について」

「分かった。すぐ行くね」

 立ち上がった瞬間、胸の奥が小さく痛んだ。

 ほんの一瞬だったけれど、息が詰まる。

 私は何でもないふりをして、机に手をついた。

 けれど、光輝は見逃さなかった。

「……理紗?」

「大丈夫」

 反射的に答えてから、私はしまったと思った。

 光輝の表情が曇る。

「今、苦しいのか」

「違うよ。本当に少しだけ」

「保健室に行く」

「行かない」

「理紗」

 低い声で呼ばれて、私は思わず顔を上げた。

 光輝は怒っているように見えた。

 でも、その目の奥にあるのは怒りじゃない。

 怖さだった。

「ごめん……」

「謝るな」

「だって、光輝が心配するから」

「心配するに決まってるだろ」

 光輝は私の前まで来ると、周りに聞こえないように声を落とした。

「無理して笑うな」

「……笑ってないよ」

「笑おうとしてる」

 胸の奥が、別の理由で苦しくなる。

 光輝は、私のことをよく見ている。

 私が隠そうとしていることまで、全部見つけてしまう。

「光輝」

「何」

「私、光輝に心配かけたくない」

「もうかかってる」

「えっ」

「病気を知ってから、ずっと心配してる」

 光輝の言葉に、胸が締めつけられた。

 私のせいで、光輝を苦しませている。

 そう思ったら、急に怖くなった。
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