恋の花火がきえる時。
「私には、病気のことを話してくれたよね」

「あれは……」

「だから、光輝のことも知りたい」

「理紗」

「恋人なのに、何も知らないのは嫌だよ」

 光輝の表情が苦しそうに歪む。

 それでも彼は、何も言わなかった。

 ただ、私の手を握り返す。

「……今日は帰れ」

「光輝と一緒に帰りたい」

「駄目だ」

「どうして?」

「俺が、そうしたいから」

 その言葉に、胸が痛くなった。

「私のこと、嫌いになった?」

「違う!」

 光輝の声が、校門に響いた。

 彼はすぐに目を伏せる。

「違う。理紗を嫌いになるわけない」

「じゃあ、どうして離れようとするの?」

 光輝は答えなかった。

 夕暮れの空に、薄い雲が広がっていく。

 昨日まであんなに近かった距離が、今日はひどく遠く感じた。

「……理紗」

「なに?」

「俺が何を言っても、離れるなよ」

「え?」

「約束してくれ」

 光輝は、今にも泣きそうな顔で私を見た。

「俺がどんなことを言っても、どんな態度を取っても……おまえだけは、俺のことを嫌いにならないでくれ」

 私は、強く頷いた。

「嫌いにならない」

「本当に?」

「うん。絶対に」

 光輝は、安心したように目を閉じた。

 そして最後に、私の額へそっとキスを落とした。

「……大好きだ」

 その声が、いつもより遠く聞こえた。

 幸せな日々は、まだ続いている。

 でも、私たちは知らなかった。

 この日を境に、光輝が少しずつ私の隣から離れていこうとしていたことを。

 私を守るために。
 私に嫌われるために。

 そして、ひとりで何かを決めようとしていたことを。
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