恋の花火がきえる時。
昼休み。

 私は光輝の席へ近づいた。

「ねえ、光輝」

「何」

「今日、一緒にお昼食べない?」

「無理」

「どうして?」

「友達と食べるから」

 光輝の周りには、何人かの男子がいた。

 その中の一人が、気まずそうに光輝を見る。

「近藤、本当に俺たちと食べるのか?」

「……ああ」

 その返事が、あまりにも冷たかった。

「そっか……」

 私は笑おうとした。

 でも、うまく笑えなかった。

「じゃあ、またあとでね」

「別に、待たなくていい」

「え?」

「俺のこと、いちいち待つな」

 光輝は、私を見なかった。

「もう、毎日一緒に帰る必要もないだろ」

 教室の音が、一瞬遠くなった。

 胸の奥が、鋭く痛む。

「……どうして?」

「どうしてって?」

「この前、ずっと隣にいるって言ったよね」

「あれは、もう忘れろ」

 光輝はそう言って、窓の外を見た。

「俺たち、付き合ってるからって、何でも一緒にいる必要はない」

「光輝……」

「正直、疲れたんだよ」

 その瞬間、息が止まった。

「おまえの病気のことも、毎日心配するのも。何をするにも気を遣わなきゃいけないし……」

 光輝の拳が、机の下で固く握られている。

「もう、そういうのは疲れた」

 頭の中が真っ白になる。

 光輝が、私の病気を迷惑だと思っていた。

 そう考えた瞬間、涙がこぼれそうになった。

「……本当に、そう思ってるの?」

「ああ」

「私のこと、重いって思ってる?」

「そうだな」

 光輝は、やっと私を見た。

 その瞳は、冷たかった。

 でも、ほんの一瞬だけ。

 苦しそうに揺れた気がした。
< 63 / 90 >

この作品をシェア

pagetop