恋の花火がきえる時。
 インターホンを押すと、理紗のお母さんが出てくる。

「あら、光輝くん……」

「理紗は?」

 声が震えないようにするので精一杯だった。

「今朝から熱があって、部屋で休んでいるの。あなたが来てくれたら、きっと安心するわ」

 その言葉に、光輝の胸が締めつけられる。

 部屋の扉を開けると、理紗はベッドの上で眠っていた。

 顔色が悪い。

 頬も赤く、呼吸が浅い。

「……理紗」

 光輝が名前を呼ぶと、理紗のまぶたがゆっくり開いた。

「……光輝?」

「ああ」

「どうして……」

「学校を休んだって聞いた」

「来ないでって、言わなかったっけ……?」

「聞いてない」

「嘘……」

 理紗は苦しそうに笑った。

「私に構うなって、光輝が言ったんだよ」

「……」

「だから、もう迷惑かけないようにしたの」

 その言葉が、光輝の胸を鋭く刺した。

「迷惑じゃない」

「でも、疲れたって……」

「違う」

「私の病気のことも、心配するのが疲れたって……」

「違う!」

 光輝の声が、部屋に響いた。

 理紗の身体がびくりと揺れる。

 光輝はすぐに目を伏せた。

「……ごめん」

「光輝が謝るなんて、珍しいね」

「全部、嘘だ」

「えっ?」

 光輝はベッドのそばに膝をついた。

「疲れたなんて思ってない。迷惑だと思ったこともない」

「じゃあ、どうして……」

「俺がいなくなったあと、おまえが少しでも楽に生きられるようにしたかった」

 理紗の目に、涙が浮かぶ。

「いなくなるって、何?」

 光輝は答えられなかった。

 握りしめた拳が震える。

「光輝……何か隠してるの?」

「……ああ」

「教えて」

「今は無理だ」

「恋人なのに?」

 その言葉に、光輝は顔を上げた。

 理紗は泣きながら、彼の袖をつかむ。

「私は光輝の病気を知りたい。光輝が苦しいなら、私も一緒に苦しみたい」

「駄目だ」

「どうして?」

「おまえまで苦しむ必要はない」

「必要があるよ!」

 理紗の声が震えた。

「光輝が私の病気を知ってくれたとき、私は一人じゃなくなった。だから今度は、私が光輝のそばにいたいの」

 光輝の瞳が揺れる。
< 67 / 90 >

この作品をシェア

pagetop