恋の花火がきえる時。
「……理紗」

「私のこと、置いていかないで」

 理紗は手を伸ばした。

 光輝はその手を取る。

 熱を持った小さな手を、壊れないように包み込む。

「置いていかない」

「本当に?」

「ああ」

「また、嫌いって言わない?」

「言わない」

「冷たくしない?」

「……できるだけ」

「できるだけじゃ嫌」

 理紗は涙をこぼしながら、光輝を見つめた。

「ずっと、優しくして」

 光輝は、泣きそうな顔で笑った。

「おまえには、最初からずっと甘いだろ」

「そうかな……」

「ああ」

 光輝は理紗の額に手を当てる。

 まだ熱い。

「今日はもう、何も考えるな」

「光輝は帰らないで」

「帰らない」

「ずっといてくれる?」

「眠るまでいる」

「眠ったあとも?」

「……できるだけ」

「またそれ」

 理紗は弱々しく笑った。

 光輝はその笑顔を見つめながら、胸の奥で何度も願った。

 このまま熱が下がりますように。
 理紗が苦しくありませんように。
 もう二度と、ひとりで泣きませんように。

 やがて理紗は、光輝の手を握ったまま眠りについた。

 光輝はベッドのそばから動かなかった。

 眠る理紗の髪を、そっと撫でる。

「……ごめんな」

 その声は、眠っている理紗には届かない。

「俺は、おまえを守りたい。でも本当は……俺が一番、おまえのそばにいたい」

 光輝の目から、静かに涙が落ちた。

 そのとき、理紗が眠ったまま小さく呟く。

「……光輝、好き……」

 光輝は息を止めた。

 そして、握られた手にそっと唇を寄せる。

「俺も好きだ。理紗」

 雨は、まだ降り続いていた。

 けれどその日だけは、光輝は理紗のそばから離れなかった。
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