恋の花火がきえる時。
待ち合わせは、駅前の時計台。

 私は少し早めに家を出た。

 歩くたびに下駄が小さく鳴る。
 慣れない浴衣で、いつもよりゆっくり歩いた。

 駅前に着くと、たくさんの人が集まっていた。

 浴衣姿の女の子。
 家族連れ。
 屋台へ向かう人たち。

 でも、光輝の姿はまだ見えない。

「……まだかな」

 スマートフォンを見る。

 約束の時間まで、あと五分。

 そのとき、後ろから声がした。

「理紗」

 振り返る。

 光輝が立っていた。

 白いシャツに、紺色の薄手の上着。
 いつもより少しだけ髪を整えている。

「光輝……!」

 私は駆け寄ろうとして、下駄でつまずいた。

「危ない!」

 光輝がすぐに腕をつかむ。

「大丈夫か」

「う、うん」

「走るな。転ぶだろ」

「ごめん……」

 光輝は私の姿をじっと見つめていた。

「……どう?」

 恥ずかしくなって、私は尋ねる。

「変じゃない?」

「変じゃない」

「それだけ?」

 少しだけ頬を膨らませると、光輝は視線を逸らした。

「……似合ってる」

「本当?」

「ああ」

「可愛い?」

「……可愛い」

 小さな声だった。

 でも、ちゃんと聞こえた。

「光輝、顔赤いよ」

「暑いだけだ」

「夜なのに?」

「うるさい」

 光輝は私の手を取った。

 指を絡めるように、しっかりと。
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