恋の花火がきえる時。
「行くぞ」

「うん!」

 人の波の中を、ふたりで歩く。

 屋台から甘い匂いが漂ってきた。

「光輝、りんご飴!」

「食べるのか」

「食べたい!」

「歯にくっつくぞ」

「それでも食べたい!」

 光輝は呆れたように息を吐きながら、りんご飴を買ってくれた。

「ありがとう!」

「落とすなよ」

「子どもじゃないもん」

 ひと口かじる。

 けれど、飴が固くてなかなか割れない。

「……かたい」

「だから言っただろ」

「光輝も食べる?」

「いらない」

「でも、すごく美味しいよ」

 私はりんご飴を差し出した。

 光輝は一瞬、固まった。

「……それ、食べかけだろ」

「恋人なら平気じゃない?」

 言ってから、自分でも恥ずかしくなった。

 光輝は何も言わず、りんご飴に口をつける。

 そして、ほんの少しだけかじった。

「……甘い」

「でしょ?」

「おまえが甘いもの好きな理由が分からない」

「光輝は甘いもの嫌い?」

「嫌いじゃない」

「じゃあ、今度一緒に食べようね」

「……ああ」

 その返事が嬉しくて、私は笑った。

 射的をして、かき氷を食べて、金魚すくいを眺める。

 何をしていても楽しかった。

 光輝が隣にいる。
 手をつないでくれている。

 それだけで、世界が特別に見えた。

 けれど、少し歩いたところで、光輝がふと足を止めた。

「……光輝?」

「何でもない」

「疲れた?」

「少し」

 光輝の顔色が、わずかに悪い。

「座る?」

「いや、大丈夫だ」

「無理しないで」

 私は近くのベンチを指差した。

「花火までまだ時間あるし、少し休もう?」

 光輝は迷ったあと、頷いた。

 ベンチに座ると、光輝は背もたれに寄りかかる。

 その横顔を見ていると、不安が胸に広がった。
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