恋の花火がきえる時。
「光輝?」

「何でもない」

「また、何でもないって言った」

「本当に何でもない」

 そう言いながら、光輝は胸元を押さえた。

 苦しそうな表情。

 私は足を止めた。

「光輝、具合悪いの?」

「大丈夫だ」

「嘘」

「理紗」

「大丈夫じゃない顔してるよ」

 光輝は、しばらく黙っていた。

 夜道には、遠くの屋台の明かりだけが残っている。

「……少し、疲れただけだ」

「病院のこと?」

 光輝の顔から、血の気が引いた。

「どうしてそれを……」

「最近、何度も病院に行ってるから」

 私は光輝の前に立つ。

「今日も、本当は病院があったの?」

「……ああ」

「なのに、来てくれたの?」

「約束したから」

「光輝……」

 胸が苦しくなった。

 私との約束を守るために、無理をしていたのだ。

「どうして言ってくれなかったの?」

「言ったら、おまえは絶対に来るなって言うだろ」

「当たり前だよ!」

「だから言えなかった」

「私に心配をかけたくないから?」

 光輝は答えなかった。

 その沈黙が、何よりの答えだった。

「私の病気のことは心配するのに、光輝は自分のことを隠すの?」

「おまえは、俺が守る側だから」

「そんなの嫌!」

 思わず声が大きくなる。

「私だって光輝を守りたい。光輝が苦しいなら、そばにいたい」

「理紗……」

「恋人でしょ?」

 光輝の瞳が揺れた。

「一人で抱えないでよ……」

 私は、光輝の胸元に手を置く。

 その下で、心臓が速く鼓動していた。

「私、光輝がいなくなるのが怖い」

「……」

「今日、花火を見ながら、光輝がずっと泣きそうな顔をしてた。『これが最後でも』って言ったよね?」

 光輝の表情が凍りつく。
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