恋の花火がきえる時。
「俺も、怖い」

 耳元で、光輝の声が震える。

「でも、おまえの前では平気なふりをしたかった」

「どうして……」

「おまえが笑ってくれるから」

 光輝の腕に力がこもる。

「理紗が笑ってる間だけは、俺も普通にいられた」

「光輝……」

「だから、泣くな」

「無理だよ……」

「俺が必ず戻る」

「約束して」

「ああ」

「絶対に戻ってきて」

「絶対に」

 私は光輝の背中に腕を回した。

 浴衣の袖が、涙で濡れていく。

 遠くの空に、最後の花火の煙が残っていた。

「光輝」

「何だ」

「私、ずっと待ってる」

「……」

「手術の日も、そのあとも。光輝が戻ってくるまで、ずっと」

 光輝は私の髪に顔を埋めた。

「そんなこと言われたら、絶対に戻らないといけないな」

「うん。絶対だよ」

「分かった」

 けれど、光輝の声には、まだ言えない何かが残っていた。

 その夜、私たちは何度も約束を交わした。

 絶対に戻る。
 ずっと待つ。
 もう、ひとりで抱えない。

 でも光輝は、私に伝えなかった。

 手術の日が、もう決まりかけていることを。

 そしてそれが、思っていたよりずっと近いことを。
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