恋の花火がきえる時。
十日後。

 夏休みが始まったばかりなのに。
 花火を見たばかりなのに。

「光輝は……知ってるんですか?」

「ええ。でも、あなたには自分から話すつもりだったみたい」

 私は俯いた。

 光輝は、またひとりで抱えていた。

 その日の夕方、私は光輝の部屋へ向かった。

 光輝は窓際の椅子に座り、外を見ていた。

「理紗?」

「光輝」

 私の声を聞いた瞬間、光輝の顔が強張る。

「どうした」

「手術の日、決まったんだね」

 光輝は黙った。

 それだけで、答えは分かった。

「……母さんから聞いたのか」

「うん」

「そうか」

「どうして教えてくれなかったの?」

「言うつもりだった」

「いつ?」

「……もう少ししたら」

 私は、光輝の前まで歩いた。

「十日後なのに?」

 光輝は視線を逸らした。

「おまえと過ごせる時間を、手術の話で終わらせたくなかった」

「でも、私は知りたかった」

「怖がらせたくなかった」

「怖いよ」

 声が震えた。

「怖いけど、知らないほうがもっと怖い」

 光輝の指が、膝の上で強く握られる。

「手術が成功するかは、分からない」

「……うん」

「途中で何か起きる可能性もある」

「うん」

「だから、もし俺が――」

「言わないで!」

 私は光輝の言葉を遮った。

「それ以上、言わないでよ……」

 涙が溢れる。

 光輝は立ち上がり、私の肩に手を置いた。

「理紗」

「私は、光輝が戻ってくるって信じる」

「ああ」

「でも、怖いものは怖いよ」

「……そうだな」

「だから、怖いって言って。光輝も、私の前では強がらないで」

 光輝は、しばらく黙っていた。
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