恋の花火がきえる時。
「こっち来い」

 私はベッドのそばに座り、その手を握った。

 いつもより冷たい。

「手術、早くなるの?」

 聞くと、光輝は黙った。

 その沈黙だけで分かってしまった。

「……いつ?」

「明日」

「明日……?」

「ああ」

 世界が、音を失ったように感じた。

 あと三日だったはずなのに。

 明日になった。

「嫌だ……」

 握った手に、力を込める。

「明日なんて、急すぎるよ……」

「俺もそう思う」

「もっと一緒にいたかった」

「十分一緒にいただろ」

「足りないよ!」

 声が病室に響いた。

「全然足りない……。来年の花火も見てないし、海にも行ってないし、まだ一緒にしたいこと、いっぱいあるのに……」

 光輝は、黙って私を見つめていた。

「理紗」

「なに……?」

「俺は、戻ってくる」

「本当に?」

「ああ」

「絶対?」

「絶対だ」

 光輝は、私の指に自分の小指を絡めた。

「約束しただろ」

「でも、怖いよ……」

「俺も怖い」

 光輝の声が、かすかに震える。

「それでも、戻る」

 その言葉を聞いて、涙が止まらなくなった。

「光輝、私ね……」

「何だ」

「もっと、好きって言えばよかった」

「今言えばいい」

「好き」

「ああ」

「大好き」

「……俺も」

「もっと言って」

 光輝は目を細めた。

「理紗が好きだ」

「うん」

「大好きだ」

「うん……」

「誰よりも好きだ」

 その言葉を聞くたびに、胸が痛くなる。

 明日、光輝は手術室へ行く。

 戻ってくると約束してくれた。

 それでも、怖い。

 私は光輝の手を握ったまま、何度も名前を呼んだ。
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