君のいない世界で恋はできない
「初音!」
今日は白いTシャツにショーパン姿。
自分の家に駆けていく初音の名を呼んだ。
彼女は振り返り、俺と目が合うと笑顔を向ける。
「待って!」
俺は初音を呼び止めた。
愛おしくて仕方ない気持ちが、俺の足を玄関に向かわせた。
共用廊下に出て、初音を優しく抱き締めた。
「むぐ…」
「おかえり」
「ただいま!」
180cmある俺に比べて、子どものように小さな初音を、ただただ愛おしく抱き締めていて、初音も俺に腕を回す。
付き合っているわけではない。
だけどこのハグを受け止めてくれる。
これが、不思議な関係で、ただの幼なじみとは言えない関係だった。
生まれた時からこのマンションに住んでいて、物心つく頃には初音と関わっていた。
年齢は俺の方がひとつ上だけど、初音は人懐っこく、全く年上扱いする様子はない。
それすら可愛らしかった。
高校は同じではなく、俺は全日制の普通の高校に通っているが、初音は訳あって通信制の高校に通っている。
初音は生まれつき体があまり強くなく、最近は精神科にも通っている。
双極性障害らしい。
そして、やや知的障がいがあり、言動が実年齢より幼く感じられることは多々ある。
だから普通の高校には馴染めず、通信制で頑張っているみたいだ。