君のいない世界で恋はできない
俺が腕を解くと、
「じゃあねー」
と、初音はあっさり自分の家に帰る。
「バイバイ」
そう返すと、手を振ってくれる。
俺はただ微笑んだ。
可愛い、何で俺のモノじゃないんだろう。
同じクラスの女子、後輩女子、どんなに可愛い子が告白してきても、何も響かない。
もうずっと初音ばかり追いかけている。
でも、肝心な言葉は、初音に伝えられないでいる。
この、何も言わなくても抱き締めさせてくれる環境が無くなるのが怖い。
初音に避けられるのが怖い。
ただの人としての好意で、欧米思考でハグしてるだけだったら…初音としては、俺の恋愛的な好意は迷惑でしかないだろう。
それで何年やってきた?
共用廊下を駆ける初音を呼び止めて、抱き締めることを。
この想いを伝えられないまま、都合良くハグしていることを。
狡いなぁ、俺。
そう思いながら部屋に戻った。
自信のない俺は、いつまでこんな体たらくやってんだろうな。
完全に俺の彼女として、抱き締められる日は来るのだろうか。
…俺が勇気を出さないことには、恋人としての物語は始まらない。