愛してるなんて、噓でしょう?
19話.若頭の隣にいる男
美月 side
その日の午後、カフェに見覚えのある男性が訪れた。
「いらっしゃいませ」
顔を上げると、そこには悠真さんが立っていた。
「こんにちは」
「こんにちは。神崎さん」
「コーヒーを一杯お願いします」
「かしこまりました」
注文を受け、コーヒーを運ぶ。
悠真さんは窓際の席に座り、スマートフォンを確認していた。
「お仕事ですか?」
「まあ、そんなところです」
「お忙しそうですね」
「蓮ほどではありませんよ」
その言葉に、私は少し笑った。
「蓮さんって、そんなに忙しいんですか?」
「忙しいですよ。あいつは自分で仕事を抱え込みすぎる」
「そうなんですね」
「昔からです」
悠真さんはコーヒーを一口飲んだ。
「美月さんは、あいつのどこが好きなんですか」
突然の質問に、私は目を丸くした。
「えっ?」
「いや、純粋に気になっただけです」
「そうですね……」
少し考える。
蓮さんの好きなところ。
優しいところ。
いつも私の気持ちを考えてくれるところ。
一緒にいると、自然に笑顔になれるところ。
でも、言葉にしようとすると、うまくまとまらなかった。
「一緒にいると安心するんです」
「安心?」
「はい。私の話をちゃんと聞いてくれて、無理に答えを求めないところも好きです」
悠真さんは黙って聞いていた。
「まだ知らないことも多いですけど、もっと知りたいと思っています」
「……そうですか」
その声は、少しだけ柔らかかった。
「なら、あいつも報われるかもしれませんね」
「え?」
「何でもありません」
悠真さんはカップを置いた。
「ただ、蓮は昔から、誰かに自分のことを話すのが苦手なんです」
「そうなんですか?」
「自分の弱いところを見せたがらない。だから、美月さんが聞いてあげてください」
私は頷いた。
「分かりました」
そのとき、店のドアベルが鳴った。
「美月ちゃん」
振り返ると、蓮さんが立っていた。
「あ、蓮さん」
「悠真、また来てたの?」
「コーヒーを飲みに来ただけです」
「俺に連絡してくれればよかったのに」
「仕事中に邪魔するほど暇じゃありません」
二人のやり取りに、私は笑ってしまう。
蓮さんは私のそばまで来ると、少しだけ顔を覗き込んだ。
「何か話してた?」
「蓮さんのことです」
「俺?」
「はい。昔から自分のことを話すのが苦手だって」
蓮さんは悠真さんを見た。
「余計なことを」
「事実です」
「美月ちゃんにまで言わなくていいのに」
そう言いながらも、蓮さんはどこか困ったように笑っていた。
その姿を見て、私は思った。
この二人の間には、私が知らない長い時間がある。
いつか、その時間の一部でも知ることができたらいい。
そう願った。
その日の午後、カフェに見覚えのある男性が訪れた。
「いらっしゃいませ」
顔を上げると、そこには悠真さんが立っていた。
「こんにちは」
「こんにちは。神崎さん」
「コーヒーを一杯お願いします」
「かしこまりました」
注文を受け、コーヒーを運ぶ。
悠真さんは窓際の席に座り、スマートフォンを確認していた。
「お仕事ですか?」
「まあ、そんなところです」
「お忙しそうですね」
「蓮ほどではありませんよ」
その言葉に、私は少し笑った。
「蓮さんって、そんなに忙しいんですか?」
「忙しいですよ。あいつは自分で仕事を抱え込みすぎる」
「そうなんですね」
「昔からです」
悠真さんはコーヒーを一口飲んだ。
「美月さんは、あいつのどこが好きなんですか」
突然の質問に、私は目を丸くした。
「えっ?」
「いや、純粋に気になっただけです」
「そうですね……」
少し考える。
蓮さんの好きなところ。
優しいところ。
いつも私の気持ちを考えてくれるところ。
一緒にいると、自然に笑顔になれるところ。
でも、言葉にしようとすると、うまくまとまらなかった。
「一緒にいると安心するんです」
「安心?」
「はい。私の話をちゃんと聞いてくれて、無理に答えを求めないところも好きです」
悠真さんは黙って聞いていた。
「まだ知らないことも多いですけど、もっと知りたいと思っています」
「……そうですか」
その声は、少しだけ柔らかかった。
「なら、あいつも報われるかもしれませんね」
「え?」
「何でもありません」
悠真さんはカップを置いた。
「ただ、蓮は昔から、誰かに自分のことを話すのが苦手なんです」
「そうなんですか?」
「自分の弱いところを見せたがらない。だから、美月さんが聞いてあげてください」
私は頷いた。
「分かりました」
そのとき、店のドアベルが鳴った。
「美月ちゃん」
振り返ると、蓮さんが立っていた。
「あ、蓮さん」
「悠真、また来てたの?」
「コーヒーを飲みに来ただけです」
「俺に連絡してくれればよかったのに」
「仕事中に邪魔するほど暇じゃありません」
二人のやり取りに、私は笑ってしまう。
蓮さんは私のそばまで来ると、少しだけ顔を覗き込んだ。
「何か話してた?」
「蓮さんのことです」
「俺?」
「はい。昔から自分のことを話すのが苦手だって」
蓮さんは悠真さんを見た。
「余計なことを」
「事実です」
「美月ちゃんにまで言わなくていいのに」
そう言いながらも、蓮さんはどこか困ったように笑っていた。
その姿を見て、私は思った。
この二人の間には、私が知らない長い時間がある。
いつか、その時間の一部でも知ることができたらいい。
そう願った。