愛してるなんて、噓でしょう?
20話.変わらない距離
美月 side
「美月さん、少しお時間をいただけますか?」
そう声をかけられたのは、仕事が終わって店を出たときだった。
振り返ると、そこには一条莉子さんが立っていた。
以前、二人で話したときと同じ、上品で落ち着いた雰囲気。
「莉子さん。お久しぶりです」
「ええ。突然ごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です」
莉子さんとは、以前にも蓮さんのことや十二年前のことについて話した。
あのとき彼女は、蓮さんの優しさだけを信じないでほしいと言っていた。
そして、過去を知らないまま彼のすべてを信じないでほしいとも。
「少し歩きませんか?」
そう誘われ、近くの静かなカフェへ向かった。
席に着くと、莉子さんは紅茶を注文した。
「蓮とは、うまくいっていますか?」
「はい。少しずつですけど」
「そう」
莉子さんはカップに視線を落とした。
「蓮は、あなたの前ではよく笑うでしょう?」
「そうですね」
「昔の蓮を知っている人間からすると、少し不思議なくらいです」
「昔は違ったんですか?」
「ええ。今よりずっと無口で、何を考えているのか分からない子でした」
その言葉に、私は蓮さんの子どもの頃を想像した。
今の彼からは、なかなか想像できない。
「でも、根本的なところは変わっていないと思います」
「根本的なところ?」
「大切なものを守ろうとすると、自分のことを後回しにしてしまうところ」
莉子さんの表情が少し曇った。
「蓮は、あなたをとても大切にしているんですね」
「……そうだったら嬉しいです」
「きっとそうよ」
莉子さんはそう言って、少しだけ微笑んだ。
けれど、その笑顔には寂しさも混じっているように見えた。
「莉子さんは、蓮さんと昔から親しいんですよね」
「ええ。家同士の付き合いもありますから」
「それって、今も続いているんですか?」
「もちろん」
莉子さんは静かに答えた。
「一条家と東條家は、昔から深い関係にあるんです」
「そうなんですね」
「だから、周囲からは私と蓮が将来一緒になるのではないかと、そう見られていることもあります」
胸の奥が、小さく揺れた。
「蓮さんは、どう思っているんでしょうか」
「さあ。本人に聞いてみたら?」
莉子さんは、私の反応を確かめるように見つめていた。
「美月さん」
「はい」
「蓮の隣にいることは、簡単ではないと思います」
「……分かっています」
「それでも、あなたが自分の意思でそこにいるなら、私は何も言いません」
その言葉に、少しだけ驚いた。
「私のことを、反対しているわけではないんですか?」
「反対する理由はありません」
莉子さんは紅茶を一口飲んだ。
「ただ、あなたには知っておいてほしいことがあるんです」
「十二年前のことですか?」
「ええ」
彼女は少しだけ視線を伏せた。
「蓮が今も抱えているものは、あなたが思っているよりずっと大きいかもしれません」
私はその言葉を、静かに受け止めた。
「それでも、私は蓮さんのことを知りたいです」
莉子さんは何も言わなかった。
ただ、少しだけ目を細めた。
「そう。あなたがそう決めたのなら」
その声は、どこか安心したようにも聞こえた。
「美月さん、少しお時間をいただけますか?」
そう声をかけられたのは、仕事が終わって店を出たときだった。
振り返ると、そこには一条莉子さんが立っていた。
以前、二人で話したときと同じ、上品で落ち着いた雰囲気。
「莉子さん。お久しぶりです」
「ええ。突然ごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です」
莉子さんとは、以前にも蓮さんのことや十二年前のことについて話した。
あのとき彼女は、蓮さんの優しさだけを信じないでほしいと言っていた。
そして、過去を知らないまま彼のすべてを信じないでほしいとも。
「少し歩きませんか?」
そう誘われ、近くの静かなカフェへ向かった。
席に着くと、莉子さんは紅茶を注文した。
「蓮とは、うまくいっていますか?」
「はい。少しずつですけど」
「そう」
莉子さんはカップに視線を落とした。
「蓮は、あなたの前ではよく笑うでしょう?」
「そうですね」
「昔の蓮を知っている人間からすると、少し不思議なくらいです」
「昔は違ったんですか?」
「ええ。今よりずっと無口で、何を考えているのか分からない子でした」
その言葉に、私は蓮さんの子どもの頃を想像した。
今の彼からは、なかなか想像できない。
「でも、根本的なところは変わっていないと思います」
「根本的なところ?」
「大切なものを守ろうとすると、自分のことを後回しにしてしまうところ」
莉子さんの表情が少し曇った。
「蓮は、あなたをとても大切にしているんですね」
「……そうだったら嬉しいです」
「きっとそうよ」
莉子さんはそう言って、少しだけ微笑んだ。
けれど、その笑顔には寂しさも混じっているように見えた。
「莉子さんは、蓮さんと昔から親しいんですよね」
「ええ。家同士の付き合いもありますから」
「それって、今も続いているんですか?」
「もちろん」
莉子さんは静かに答えた。
「一条家と東條家は、昔から深い関係にあるんです」
「そうなんですね」
「だから、周囲からは私と蓮が将来一緒になるのではないかと、そう見られていることもあります」
胸の奥が、小さく揺れた。
「蓮さんは、どう思っているんでしょうか」
「さあ。本人に聞いてみたら?」
莉子さんは、私の反応を確かめるように見つめていた。
「美月さん」
「はい」
「蓮の隣にいることは、簡単ではないと思います」
「……分かっています」
「それでも、あなたが自分の意思でそこにいるなら、私は何も言いません」
その言葉に、少しだけ驚いた。
「私のことを、反対しているわけではないんですか?」
「反対する理由はありません」
莉子さんは紅茶を一口飲んだ。
「ただ、あなたには知っておいてほしいことがあるんです」
「十二年前のことですか?」
「ええ」
彼女は少しだけ視線を伏せた。
「蓮が今も抱えているものは、あなたが思っているよりずっと大きいかもしれません」
私はその言葉を、静かに受け止めた。
「それでも、私は蓮さんのことを知りたいです」
莉子さんは何も言わなかった。
ただ、少しだけ目を細めた。
「そう。あなたがそう決めたのなら」
その声は、どこか安心したようにも聞こえた。