愛してるなんて、噓でしょう?

32話.近づく心

美月 side
「水瀬さん、今度の休みって予定ある?」

仕事終わり、湊さんにそう尋ねられた。

「今のところは、特にありません」

「よかったら、映画でも行かない?」

映画。


少し迷った。

「二人で、ですか?」

「うん。嫌だったら無理にとは言わないよ」

湊さんはいつもと同じ笑顔だった。


私は少し考えてから答えた。

「映画なら、ぜひ」

「本当? ありがとう」

その日、帰宅してから蓮さんに連絡をした。

『今度の休み、職場の人と映画に行くことになりました』

すぐに返信が届く。

『職場の人?』

『はい。白石さんです』

しばらくして、またメッセージが届いた。

『そうなんだ。楽しんできてね』

その文章はいつも通りだった。


でも、私は少しだけ不安になった。


翌日、蓮さんと会ったとき、彼はいつも以上に優しかった。

「美月ちゃん、何か食べたいものある?」

「今日は蓮さんの好きなものでいいですよ」

「俺は美月ちゃんの好きなものがいいな」

優しい。


いつもと変わらない。


なのに、どこか距離を感じる。

「蓮さん」

「ん?」

「映画のこと、気になりますか?」

彼は少しだけ目を見開いた。

「どうして?」

「何となく」

蓮さんは、私の手に触れた。

「気にならないと言ったら嘘になるよ」

「……そうですか」

「でも、行っておいで」

その言葉に、少し安心した。

「ありがとうございます」

「楽しんできてね」

彼は笑った。


私は、その笑顔を信じたいと思った。

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