愛してるなんて、噓でしょう?

第五章 36話.甘い恋人生活

美月 side
蓮と恋人になってから、数日が経った。


特別に何かが変わったわけではない。


朝起きて、仕事へ行って、カフェで働いて、帰宅する。


そんな何気ない毎日。


けれど、ひとつだけ変わったことがある。


それは、毎日の中に蓮がいることだった。

『おはよう。今日も無理しないでね』

朝、スマートフォンを開くと、蓮からメッセージが届いていた。


思わず頬が緩む。

『おはようございます。蓮さんもお仕事頑張ってください』

送信すると、すぐに既読がついた。

『ありがとう。美月にそう言われると頑張れる』

たったそれだけの言葉なのに、胸が温かくなる。


恋人になったからといって、急に何かが変わるわけじゃない。


でも、好きな人から届く言葉ひとつで、こんなにも幸せになれるんだ。

「美月、朝からいいことあった?」

カフェの店長に声をかけられ、私は慌ててスマートフォンを伏せた。

「えっ?」

「顔が緩んでる」

「そ、そんなことないです」

「ふふ。恋人ができると違うね」

店長の言葉に、頬が熱くなる。

「……はい」

小さく答えると、店長は楽しそうに笑った。


仕事が終わった夕方。


店の外に出ると、見慣れた黒い車が停まっていた。


その隣に立っていた蓮が、私を見つけて微笑む。

「美月」

「蓮さん!」

名前を呼ぶだけで、心が弾む。


蓮は私のそばまで歩いてくると、自然に手を差し出した。

「お疲れさま。帰ろうか」

「うん」

差し出された手を握る。


恋人になってから、蓮は以前よりも少しだけ甘くなった気がする。

「今日は何か食べたいものある?」

「うーん……蓮さんと一緒なら何でも」

「それは困ったな」

「どうして?」

「美月の好きなものを食べさせてあげたいから」

そう言って、蓮は優しく目を細めた。

「じゃあ、今日は美月の好きな苺のケーキも買って帰ろう」

「本当に?」

「もちろん」

こんなふうに、私の小さな好みまで覚えていてくれる。


その優しさが嬉しい。


けれど、ふと考えてしまう。


蓮は、私のことをどれくらい知っているんだろう。


私が覚えていない過去まで、知っているのだろうか。

「美月?」

「え?」

「どうしたの?」

「ううん。何でもない」

蓮は少しだけ私の顔を見つめたあと、握った手に優しく力を込めた。

「何でもない、でもいいよ。でも、話したくなったら聞かせて」

「……ありがとう」

今は、この温かい時間を大切にしたい。


そう思った。

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