愛してるなんて、噓でしょう?
夕方。


店内が少しずつ混み始めた頃、私はカウンターで食器を片付けていた。


すると、店の外に黒いスーツ姿の男性が立っているのが見えた。


誰かを待っているのかな?


そう思って視線を戻した、そのとき。

「美月ちゃん」

「はい?」

窓際に座っていた彼が、私を呼んだ。

「そろそろ帰るね」

「あ、はい! ありがとうございました」

会計を済ませた彼は、いつものように優しく微笑む。

「また来るよ」

「ありがとうございます!」

「……美月ちゃん」

「はい?」

「無理して笑わなくていいからね」

「え?」

思いがけない言葉に、私は固まった。

「いつも頑張ってるみたいだから」

彼はそれだけ言って、店を出ていった。


私はしばらく、その背中を見つめていた。


どうして。


どうして、そんなことが分かるんだろう。


私はいつもどおり笑っていただけなのに。

「……変な人」

そう呟いた声は、自分でも驚くほど小さかった。

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