愛してるなんて、噓でしょう?

38話.莉子の忠告

美月 side
休日の午後。


私は莉子さんに呼び出され、落ち着いた雰囲気のカフェに来ていた。

「急にごめんなさいね」

「いえ、大丈夫です」

莉子さんは紅茶を一口飲んでから、私を見た。

「最近、蓮とはどう?」

「え?」

「恋人になったのでしょう?」

少し驚いたけれど、私は頷いた。

「はい」

「そう」

莉子さんは微笑んだ。


その表情には、以前よりも柔らかさがあった。

「幸せそうね」

「……はい。蓮さんは、とても優しいです」

「そうでしょうね」

けれど、莉子さんはすぐに真剣な表情になった。

「美月さん。あなたに聞いてほしいことがあるの」

「何でしょうか」

「十二年前のことよ」

その言葉に、背筋が伸びた。

「あなたのお父様が、東條会と関係していたことは知っているわね」

「はい。蓮さんからも聞きました」

「なら、少しだけ話しておくわ」

莉子さんは、窓の外へ視線を向けた。

「十二年前、東條会の中では大きな問題が起きていたの。多くの人が、それぞれの事情を抱えていた」

「それと、私の父が関係していたんですか?」

「ええ。でも、あなたのお父様が何を知っていたのか、すべてを知っている人は少ないと思う」

「蓮さんは?」

莉子さんはすぐには答えなかった。

「蓮は、あなたのお父様のことを知っている。でも、彼自身もすべてを知っているわけではない」

その言葉に、私は唇を結んだ。

「どうして、私に教えてくれないんでしょうか」

「あなたを傷つけたくないからでしょうね」

「それは分かっています。でも……」

私は膝の上で手を握った。

「知らないままでいることも、怖いんです」

莉子さんは静かに頷いた。

「そうね。知らされないことは、ときに優しさではなくなる」

その言葉が胸に残った。

「美月さん」

「はい」

「蓮を信じることと、彼の言葉を何でも受け入れることは違うわ」

私は顔を上げた。

「あなたには、あなた自身の気持ちを大切にしてほしい」

「……ありがとうございます」

莉子さんは少しだけ微笑んだ。

「それから、もうひとつ」

「はい?」

「あなたのことを心配している人は、蓮だけではないわ。私も、悠真も。もちろん、湊くんだって」

思わず笑ってしまう。

「湊くんは、いつも優しいです」

「そうね。でも、彼も自分の気持ちを抱えているでしょう」

「……はい」

誰かに大切にされることは、嬉しい


けれど、その気持ちに甘えてばかりではいけない。


私も、自分の意思で向き合わなければ。

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