愛してるなんて、噓でしょう?
東條蓮 side


「蓮さん」

車に乗り込むと、悠真が声をかけてきた。

「何?」

「随分ご機嫌ですね」

「そう?」

「ええ。分かりやすいくらいに」

悠真は呆れたように笑った。

「で、今日は何を話したんです?」

「名前を呼んでもらった」

「……は?」

「蓮さん、って」

俺がそう言うと、悠真は一度目を閉じた。

「お前、そんなことで喜んでんのかよ」

「悪い?」

「いや、別に」

悠真は小さくため息をついた。

「それより、会長がお呼びです」

その言葉に、俺の表情が少しだけ変わる。

「父さんが?」

「はい。本部でお待ちです」

「分かった」

俺は窓の外に目を向けた。


さっきまでの穏やかな気持ちは、少しずつ消えていく。


俺には、戻らなければならない場所がある。


東條会。


そして、若頭という立場。


美月には、まだ知られたくない。


あの子の前では、ただの一人の男でいたかった。

「蓮さん」

「何?」

「彼女に、いつ話すつもりですか?」

俺は少しだけ黙った。

「……いつかは」

「そうですか」

「でも、今はまだいい」

俺はポケットの中の星のチャームに触れた。


美月。


君には、まだ何も知らなくていい。


せめて今だけは。


俺のことを、優しい男だと思っていてほしい。

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