愛してるなんて、噓でしょう?
駅に近づいたところで、私はふと思い出した。

「あっ、そうだ!」

「ん?」

「この前の差し入れ、店長もすごく喜んでました!」

「そう。よかった」

「本当にありがとうございました!」

「美月ちゃんが喜んでくれたなら、それでいいよ」

まただ。


さらっと、そんなことを言う。

「蓮さんって、誰にでも優しいんですね」

何気なく口にすると、彼は少しだけ黙った。

「……誰にでも、ではないかな」

「え?」

「大切にしたい人には、優しくしたいと思うよ」

蓮さんは私を見つめた。


その目が、いつもより真剣に見えた。

「美月ちゃんは?」

「わ、私ですか?」

「うん」

「私は……普通です!」

「普通?」

「はい! 普通の人です!」

自分でも何を言っているのか分からない。


蓮さんは楽しそうに笑った。

「そっか。普通の人なんだね」

「もう! 笑わないでください!」

「ごめん、ごめん」

笑い声が夜の街に溶けていく。


こんなふうに誰かと笑いながら歩くのは、久しぶりだった。

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