愛してるなんて、噓でしょう?
コーヒーを運んだあと。


蓮さんが私を呼んだ。

「美月ちゃん」

「はい?」

「少し、時間ある?」

「今なら大丈夫です」

「昨日のこと、話したいんだけど」

心臓が大きく跳ねた。


昨日のこと。


きっと、彼も分かっているんだ。


私が何を知ったのか。

「……はい」

蓮さんは静かに口を開いた。

「俺は東條会の人間だよ」

やっぱり。

「東條会って……」

「うん。普通の会社とは違う」

彼は目を逸らさなかった。

「俺は、その組織の若頭をしている」

私は何も言えなかった。

「隠していてごめん」

「どうして、教えてくれなかったんですか?」

気づけば、そんな言葉が口から出ていた。


蓮さんは少しだけ目を伏せた。

「怖がらせたくなかった」

「……」

「美月ちゃんには、俺のことを普通の男として知ってほしかったんだ」

その言葉に、胸が痛くなる。


優しい言葉なのに。


今は素直に喜べなかった。

「でも、私は何も知らなかった」

「うん」

「蓮さんがどんな人なのかも、どんな世界にいるのかも」

「そうだね」

彼は静かに頷いた。

「だから、これから少しずつ話していきたい」

私は彼の顔を見つめた。

「……本当に?」

「約束する」

その目は真剣だった。


私は小さく息を吐いた。

「少し、時間をください」

蓮さんは一瞬だけ寂しそうに笑った。

「もちろん」

その返事が、今はありがたかった。

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