愛してるなんて、噓でしょう?
「お待たせしました。ホットコーヒーと苺のタルトです」

「ありがとう」

蓮さんはカップを手に取り、ゆっくりとコーヒーを口に運んだ。


その横顔を、私は何となく見つめてしまう。


綺麗な顔。


優しい声。


だけど、その奥にはまだ知らない部分がたくさんある。


東條会の若頭。


そう聞いたときの驚きは、今でも忘れられない。


それでも、今目の前にいる蓮さんは、私にとって優しい一人の男性だった。

「美月ちゃん?」

「は、はい!」

「どうしたの?」

「いえ、何でもないです!」

蓮さんは少し首を傾げたあと、ふっと笑った。

「そっか」

そして、コーヒーカップを置く。

「そうだ。美月ちゃんに渡したいものがあるんだ」

「私に?」

「うん」

蓮さんは隣に置いていた小さな紙袋を手に取った。


白い紙袋に、淡いピンク色のリボン。


それをカウンター越しに差し出される。

「これ、よかったら」

「え……?」

「いつも頑張ってる美月ちゃんに」

突然のことに、私は紙袋と蓮さんの顔を交互に見た。

「でも、どうして……?」

「この前、少し疲れているように見えたから」

「そんなことないですよ」

「そう?」

蓮さんは穏やかに笑う。

「俺が渡したかっただけだから。迷惑じゃなければ、受け取ってほしい」

その言い方は、決して無理強いするものではなかった。


だからこそ、断る理由が見つからない。

「……ありがとうございます」

私はそっと紙袋を受け取った。

「開けてもいいですか?」

「もちろん」

リボンをほどき、中を覗く。


そこに入っていたのは、小さな箱だった。


蓋を開けると、淡いピンク色の小さなブックマーカーが入っていた。


透明な飾りの中に、苺の模様が閉じ込められている。


シンプルだけど、可愛らしい。

「わぁ……」

思わず声が漏れた。

「可愛い……!」

「気に入ってくれた?」

「はい!すごく可愛いです!」

私はブックマーカーをそっと手に取った。

「でも、どうしてこれを?」

「この前、本が好きだって話してくれたでしょう?」

「えっ……」

確かに、少しだけ話したことがある。


休みの日には本を読んで過ごすことが多い、と。

「それに、苺も好きだし。ちょうどいいと思って」

「そんなことまで覚えてたんですか?」

「美月ちゃんの話は、ちゃんと聞いてるよ」

その言葉に、胸が温かくなる。


私が何気なく話したことを、蓮さんは覚えていてくれた。


それが、どうしようもなく嬉しかった。

「ありがとうございます。大切にしますね」

「うん。使ってくれたら嬉しいな」

蓮さんは満足そうに微笑んだ。


その笑顔を見ていると、自然と私まで笑顔になってしまう。

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