愛してるなんて、噓でしょう?
その日の夜。


私は何度も、昼間の電話を思い出していた。


蓮さんのことを知っている女性。


昔から知っていると言っていた。


もしかして、東條会の関係者なのだろうか。


考えれば考えるほど、分からなくなる。


スマホを手に取り、蓮さんとのメッセージ画面を開いた。

『蓮さん、今少しお話できますか?』

送信して数分後。


すぐに返信が届いた。

『もちろん。何かあった?』

私は少し迷ったあと、電話のことを伝えた。

『今日、知らない女性から電話があって……』

『俺のことを知っている人みたいでした』

すると、すぐに着信が入った。


蓮さんからだった。

「もしもし」

『美月ちゃん、大丈夫?』

いつもより少し低い声。

「はい。大丈夫です」

『何を言われたの?』

「蓮さんの優しさを、全部信じないほうがいいって……」

電話の向こうが静かになる。

『……そう』

その反応に、私は少し不安になった。

「蓮さん、その人のこと知ってるんですか?」

『たぶんね』

「誰なんですか?」

少しの沈黙。

『一条莉子』

やっぱり。


第10話の最後に聞いた名前だった。

「その人が、どうして私に?」

『ごめんね。嫌な思いをさせた』

「いえ、私は……」

『美月ちゃん』

蓮さんの声が、少しだけ柔らかくなる。

『今は何も心配しなくていいよ』

「でも……」

『俺からちゃんと話す。だから、もう少しだけ待っていて』

私は小さく頷いた。

「分かりました」

『ありがとう』

電話を切ったあとも、心の中には小さな疑問が残っていた。


蓮さんが隠していること。


莉子さんが知っていること。


そして、十二年前のこと。


私はまだ、そのどれも知らない。

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