愛してるなんて、噓でしょう?
時計を見ると、閉店時間が近づいていた。


窓際の男性も、ようやく席を立った。

「お会計、お願いします」

「はい。ありがとうございます」

伝票を受け取り、レジを打つ。

「八百円になります」

「はい」

男性は財布からお金を取り出し、私に渡した。

「ありがとうございました!」

「こちらこそ」

彼は傘を手に取る。


そして、店を出る直前に振り返った。

「美月ちゃん」

「はい?」

「またね」

たったそれだけ。


なのに。

「……はい。またお待ちしてます!」

私が笑うと、彼も優しく微笑んだ。


カラン、コロン。


ベルの音とともに、彼の姿が雨の向こうへ消えていく。


私はしばらく、そのドアを見つめていた。

「……不思議な人」

初めて会ったはずなのに。


ずっと前から知っていたような。


そんな気がした。

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