崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
ミランダの予想どおり、夜明けの頃にミランダは帝国北にある国境に到着し、シリルたちがいるという駐屯地の姿も朝焼けの中で見えてきたのだが。
(戦闘が起きている……!?)
朝日の中では目立ってしまう黒いローブを脱いだミランダは、ぐっと拳を固めた。
このあたりは国境として、森の中に低めの城壁が建ち東西に向かって延びている。そこの随所に設けられた関所を通って国家間を行き来するのだが、その森のあちこちで爆発の煙が上がり、人々の叫び声が聞こえていた。
(手遅れだった!? いえ、まだチャンスはあるわ……!)
ミランダは森の中に降り立ち、自分の姿を消すように結界を施した。これで、ミランダが驚いたり予想外の怪我をしたりして集中力が途切れない限り、魔力を持たない人間に姿を見られることはない。
そうしてしばらく様子を窺うと、見慣れた国旗を掲げる部隊の姿が見えた。あれは、帝国軍だ。
「王子はどこに行った!?」
「森の中を逃げているようです! 矢は右肩に命中して、落馬したかと……」
「ならば、いずれ力尽きるはず。だが、遺骸は必ず確認せよとのことだ。確実に探して、討ち取れ!」
部隊長らしき者の声に、ミランダはショックのあまり結界を解除してしまいそうになった。
(矢が……命中した!?)
事態は、最悪の一歩手前まで迫っていた。
一刻も早くシリルを森の中から見つけ出し、解毒剤を投与しなければ。
(帝国軍よりも……できれば、王国軍よりも早く見つけないと!)
帝国軍に見つかるのはもちろんのこと、王国軍に見つけられるのもあまり好ましくない。
王国軍では、シリルの解毒のための薬を用意できない。彼らのもとにシリルが運ばれたら、帝国魔術師団員であるミランダでは警戒され、薬を投与する成功率が下がってしまう。
(殿下、どこ……!?)
魔力で近くにいる人間の気配を探ることはできるが、せいぜいどこに何人いるかという程度だ。シリルをピンポイントで探し出すことはできない――
(いえ、もし殿下が毒を受けているのなら、動きが鈍っているはず……)
ミランダは考え直し、大きく張り出した木の枝に腰かけて静かに集中した。そうして魔力を森全体に延ばしていき、あちこちに点在する人間の姿を察知する。
ほとんどの人間は騎乗しているようで、気配の形が独特だし動きが速い。徒歩の者もいるようだが、その動きはいずれもしっかりしている。
シリルは毒矢を受け、馬も失っているはず。だとしたら動かずじっとしているか、かなり遅い速度で移動しているはず――
(戦闘が起きている……!?)
朝日の中では目立ってしまう黒いローブを脱いだミランダは、ぐっと拳を固めた。
このあたりは国境として、森の中に低めの城壁が建ち東西に向かって延びている。そこの随所に設けられた関所を通って国家間を行き来するのだが、その森のあちこちで爆発の煙が上がり、人々の叫び声が聞こえていた。
(手遅れだった!? いえ、まだチャンスはあるわ……!)
ミランダは森の中に降り立ち、自分の姿を消すように結界を施した。これで、ミランダが驚いたり予想外の怪我をしたりして集中力が途切れない限り、魔力を持たない人間に姿を見られることはない。
そうしてしばらく様子を窺うと、見慣れた国旗を掲げる部隊の姿が見えた。あれは、帝国軍だ。
「王子はどこに行った!?」
「森の中を逃げているようです! 矢は右肩に命中して、落馬したかと……」
「ならば、いずれ力尽きるはず。だが、遺骸は必ず確認せよとのことだ。確実に探して、討ち取れ!」
部隊長らしき者の声に、ミランダはショックのあまり結界を解除してしまいそうになった。
(矢が……命中した!?)
事態は、最悪の一歩手前まで迫っていた。
一刻も早くシリルを森の中から見つけ出し、解毒剤を投与しなければ。
(帝国軍よりも……できれば、王国軍よりも早く見つけないと!)
帝国軍に見つかるのはもちろんのこと、王国軍に見つけられるのもあまり好ましくない。
王国軍では、シリルの解毒のための薬を用意できない。彼らのもとにシリルが運ばれたら、帝国魔術師団員であるミランダでは警戒され、薬を投与する成功率が下がってしまう。
(殿下、どこ……!?)
魔力で近くにいる人間の気配を探ることはできるが、せいぜいどこに何人いるかという程度だ。シリルをピンポイントで探し出すことはできない――
(いえ、もし殿下が毒を受けているのなら、動きが鈍っているはず……)
ミランダは考え直し、大きく張り出した木の枝に腰かけて静かに集中した。そうして魔力を森全体に延ばしていき、あちこちに点在する人間の姿を察知する。
ほとんどの人間は騎乗しているようで、気配の形が独特だし動きが速い。徒歩の者もいるようだが、その動きはいずれもしっかりしている。
シリルは毒矢を受け、馬も失っているはず。だとしたら動かずじっとしているか、かなり遅い速度で移動しているはず――