崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
「皆は、南の門の手前で待機しなさい。指示があるまで、決して門を開けない。しかし……『開けるべきとき』が来たと判断したら開け、王国軍を刺激しないように迎え入れるのです」
「……ミランダ様、それはいったい……?」

 魔道学院の生徒の一人が不思議そうに首をひねるが、ミランダの意図をいち早く察したレベッカがさっと気色ばんだ。

「まさかミランダ様……!」
「ごめんなさい。私はこんな形でしか、皆に報いられません」

 ミランダはレベッカに微笑みかけ、とんと地を蹴った。

「……皆、どうか無事で――」
「させません!」

 今にも南の門を向こうへ飛ぼうとしたミランダの足に、レベッカが飛びついた。まさかそんなことをされると思っていなくて、ミランダはぎょっとする。

「レベッカ!?」
「皆、ミランダ様を止めて! ミランダ様は……ご自分が犠牲になろうとしているの!」

 レベッカが必死の形相で言った瞬間、はっとした様子の生徒や兵士たちが群がってきて、とうとうミランダは地面に着地してしまった。

「ちょ、やめて、やめなさい!」
「やめません!」
「これが一番いいのよ! だから行かせて――」
「……ばらしますよ?」

 突如、顔を近づけてきたレベッカが囁いたため、ミランダはひゅっと息を呑んだ。

 間近で見るレベッカの顔は、真剣だった。
 真剣に……彼女はお腹の子を盾に、ミランダを脅していた。

(レベッカ……)

 それは、厳しくて冷酷でありながらも……レベッカの、最大限の愛だった。

 へたりと座り込んだミランダを一度抱きしめてから、レベッカは皆のほうに向いた。

「……皆で、ここを守るわ! 城も、ミランダ様も……絶対に失わない!」

 レベッカが勇ましく声を上げると、学生も兵士たちも、おお! と声を上げた。
 そんな様を、ミランダは絶望の眼差しで見ていた。

 たった、三十人程度だ。
 負傷者や子どもばかりの三十人で、彼らは三千の王国軍と戦おうとしている。

(私は、そんなことは……)
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