崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
なんとか出産を終えられたミランダだが、その後が地獄の日々だった。
いきみすぎたせいで体のあちこちが痛いし、胸も硬く張って痛いし……とにかく、体のあちこちが痛い。
産後はまともに眠れない日が続き、やっと痛みが治まった後はがりがりに痩せた体をもとに戻すために栄養を取らなければならなかった。
その日々でもとにかく眠く、疲れる。
おかげで息子に再会できたのは、出産からゆうに五日経った日のことだった。
(ちょっとだけ、人間っぽくなったかも?)
産婆から受け取った我が子は、白いおくるみでくるんと巻かれていた。
ミランダのためにシリルが近くの町から乳母になってくれる女性を呼んでくれていたらしく、乳を飲んでお腹いっぱいのセドリックはミランダの胸元ですやすやと眠っていた。
「かわいい……」
「ええ、本当に。お母様に似ておかわいらしいぼっちゃまです」
産婆がにこにこの笑顔で言うので、ミランダはもう、と苦笑した。
「お上手ですこと。……そういえば、レベッカは?」
「レベッカちゃんたちは、なにやら用事があるとのことで皆、出払っております」
「あら……お外かしら?」
「いえ、どうやらシリル殿下に呼ばれたそうで」
産婆が言うので、おや、とミランダは首を傾げた。
シリルはベッドに伸びているミランダのために、セドリックに関する諸々の手続きをしてくれていた。そのことはレベッカが伝えてくれたが、痛いか眠いかのどちらかな状態が続いていたミランダはその話もあまり頭に入っていない。
(お産が終わってすぐに来てくださって以来だし、きちんとお礼を言わないとね)
セドリックを腕の中であやしながら、ミランダはそんなことを思っていたのだが――
「……ミランダ様っ!」
ドアをバァンと叩き開けながらレベッカが部屋に来たのは、乳母にセドリックを預けたミランダがゆったりとお茶を飲んでいるときのことだった。
突然の爆音に産後の体にも優しいという特別なお茶を噴き出しそうになったミランダだが、ドアのところに立っているレベッカはきらっきらの笑顔だ。
「レ、レベッカ。どうしたの、一体……」
「もう、もうっ! ミランダ様ってば、水くさいんですから! 私には教えてくれてもよかったのにー!」
ミランダの声も耳に入っていないのかレベッカはすっかり興奮しており、彼女に詰め寄られたミランダのほうが焦ってしまう。
「え、ど、どうしたの? なんのこと?」
「シリル殿下のことですよ! 内緒で会っていたなんて、憎いじゃないですかー!」
すっかり舞い上がっている様子のレベッカに……どきん、とミランダの心臓が不安を訴えた。
シリルと、内緒で会っていた。
(まさか、去年のこと……!? どうしてそれを、レベッカが!?)
毒矢事件のことが急に思い出されて青ざめるミランダだが、レベッカはそんなミランダの手を取った。
「ミランダ様が帝都で密かに会っていた恋人、シリル殿下なんですよね!? きゃー、おめでとうございますー!」
一人で興奮するレベッカに、
「……は、い?」
ミランダは間抜けな声を上げることしかできなかった。
いきみすぎたせいで体のあちこちが痛いし、胸も硬く張って痛いし……とにかく、体のあちこちが痛い。
産後はまともに眠れない日が続き、やっと痛みが治まった後はがりがりに痩せた体をもとに戻すために栄養を取らなければならなかった。
その日々でもとにかく眠く、疲れる。
おかげで息子に再会できたのは、出産からゆうに五日経った日のことだった。
(ちょっとだけ、人間っぽくなったかも?)
産婆から受け取った我が子は、白いおくるみでくるんと巻かれていた。
ミランダのためにシリルが近くの町から乳母になってくれる女性を呼んでくれていたらしく、乳を飲んでお腹いっぱいのセドリックはミランダの胸元ですやすやと眠っていた。
「かわいい……」
「ええ、本当に。お母様に似ておかわいらしいぼっちゃまです」
産婆がにこにこの笑顔で言うので、ミランダはもう、と苦笑した。
「お上手ですこと。……そういえば、レベッカは?」
「レベッカちゃんたちは、なにやら用事があるとのことで皆、出払っております」
「あら……お外かしら?」
「いえ、どうやらシリル殿下に呼ばれたそうで」
産婆が言うので、おや、とミランダは首を傾げた。
シリルはベッドに伸びているミランダのために、セドリックに関する諸々の手続きをしてくれていた。そのことはレベッカが伝えてくれたが、痛いか眠いかのどちらかな状態が続いていたミランダはその話もあまり頭に入っていない。
(お産が終わってすぐに来てくださって以来だし、きちんとお礼を言わないとね)
セドリックを腕の中であやしながら、ミランダはそんなことを思っていたのだが――
「……ミランダ様っ!」
ドアをバァンと叩き開けながらレベッカが部屋に来たのは、乳母にセドリックを預けたミランダがゆったりとお茶を飲んでいるときのことだった。
突然の爆音に産後の体にも優しいという特別なお茶を噴き出しそうになったミランダだが、ドアのところに立っているレベッカはきらっきらの笑顔だ。
「レ、レベッカ。どうしたの、一体……」
「もう、もうっ! ミランダ様ってば、水くさいんですから! 私には教えてくれてもよかったのにー!」
ミランダの声も耳に入っていないのかレベッカはすっかり興奮しており、彼女に詰め寄られたミランダのほうが焦ってしまう。
「え、ど、どうしたの? なんのこと?」
「シリル殿下のことですよ! 内緒で会っていたなんて、憎いじゃないですかー!」
すっかり舞い上がっている様子のレベッカに……どきん、とミランダの心臓が不安を訴えた。
シリルと、内緒で会っていた。
(まさか、去年のこと……!? どうしてそれを、レベッカが!?)
毒矢事件のことが急に思い出されて青ざめるミランダだが、レベッカはそんなミランダの手を取った。
「ミランダ様が帝都で密かに会っていた恋人、シリル殿下なんですよね!? きゃー、おめでとうございますー!」
一人で興奮するレベッカに、
「……は、い?」
ミランダは間抜けな声を上げることしかできなかった。