崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
嘘つきたちの同盟
経緯を簡単に説明すると。
シリルは、ふらふらのミランダのためにできることをしてあげようと思った。そうして彼がやってくれたことのひとつが、教会でセドリックの魔力と『祝福印』を検査することだった。
ちょうどアルベック城には、小さな教会がある。そこには魔力と『祝福印』を測定する機器が揃っていたので、シリルはセドリックを連れて教会に行き、測定をしたらしい。
その結果、セドリックには高い魔力と【炎】の『祝福印』があることが判明した。
そこまではミランダも想定内のことなので全く問題ないのだが……担当した神官に対してシリルが、「セドリックの父親は僕だ」と言ってしまったという。
「……なんで!? なんでそうなるんですかっ、殿下!?」
「その、すまない。金髪だし僕と同じ【炎】の『祝福印』だから通ると思って」
「だからってこれはないでしょう!」
ミランダの部屋にて、事のあらましを説明されたミランダは真っ青になってシリルに詰め寄っていた。
シリルからの爆弾発言を聞いた神官は大喜びで、セドリックの父親がシリルであるとレベッカたちにも教えてしまった。
そうしてアルベック城は「シリル殿下とミランダ様が結ばれていた!」と大興奮で、皆から祝福の言葉を投げかけられてミランダは既にへろへろだった。
シリルのほうはここまでの騒ぎになるとは思っていなかったようだし、彼も少し困ったように笑っていた。
「でも、セドリックには父親がいたほうがいいだろう。それに僕も、セドリックならかわいがって育てられると思うんだ」
「馬鹿なことをおっしゃらないでください!」
思わずミランダは椅子から立ち上がり、声を荒らげてしまった。
(なんで!? こんなことになるはずじゃなかったのに!)
「だいたい、去年の夏にどうやって私たちが知り合えるんですか!? 私の恋人は――」
「――帝都で知り合った、金髪の旅人。彼はミランダの妊娠を知ることなく、帝都から立ち去った」
シリルは落ち着いた口調で、ミランダの恋人の『設定』を語る。
「でもそれは、ミランダが僕のためについた嘘だった。ミランダは帝国が王国に攻め入ると知って、心配になり僕に会いに来てくれた。僕はそんな君を愛するようになり、僕たちは二国が本格的に戦を始める前にお互いの想いを確かめてから、別れた。そのときにできたのが、セドリックだ――というシナリオだ」
「な、なんてことを……」
シリルのあんまりな嘘に目眩がしそうだが……いや、実はかなり真実に近いシナリオではないかとミランダは気づいた。
唯一真実と違うのは、シリルがあの夜のことを覚えていないという点だけ。
そこさえ除けば、セドリックが二人の間に生まれた王家の子で、シリルの迷惑にならないようにとミランダが架空の恋人を作り上げてレベッカの語ったのだという解釈になり、「ミランダ様はシリル殿下のことを想って嘘をついたのですね!」とレベッカすら納得させるストーリーに仕上がるのだ。
「でもそれじゃあ……セドリックは……」
「僕の実子であると皆に知らせる。もちろん、女王陛下にも」
「それは! 女王陛下や国民を欺くことになります!」
ミランダは必死に言い返すが……悲しいことに、これは嘘ではない。
セドリックは、シリルの子だ。リドベキア王家の血を継ぐ……王位継承者だ。
だがシリルとミランダは、その真実を偽っている。本当は旅人の男が父親だが、シリルの子と偽って……だが皆からすると、セドリックはシリルの子で……。
(あ、もう、わけがわからないわ……)
なにが真実で、なにが偽りなのか。
誰がどこまでを把握しているのか、誰にどこまでのことを言ってもいいのか、わからなくなってきた。
シリルは、ふらふらのミランダのためにできることをしてあげようと思った。そうして彼がやってくれたことのひとつが、教会でセドリックの魔力と『祝福印』を検査することだった。
ちょうどアルベック城には、小さな教会がある。そこには魔力と『祝福印』を測定する機器が揃っていたので、シリルはセドリックを連れて教会に行き、測定をしたらしい。
その結果、セドリックには高い魔力と【炎】の『祝福印』があることが判明した。
そこまではミランダも想定内のことなので全く問題ないのだが……担当した神官に対してシリルが、「セドリックの父親は僕だ」と言ってしまったという。
「……なんで!? なんでそうなるんですかっ、殿下!?」
「その、すまない。金髪だし僕と同じ【炎】の『祝福印』だから通ると思って」
「だからってこれはないでしょう!」
ミランダの部屋にて、事のあらましを説明されたミランダは真っ青になってシリルに詰め寄っていた。
シリルからの爆弾発言を聞いた神官は大喜びで、セドリックの父親がシリルであるとレベッカたちにも教えてしまった。
そうしてアルベック城は「シリル殿下とミランダ様が結ばれていた!」と大興奮で、皆から祝福の言葉を投げかけられてミランダは既にへろへろだった。
シリルのほうはここまでの騒ぎになるとは思っていなかったようだし、彼も少し困ったように笑っていた。
「でも、セドリックには父親がいたほうがいいだろう。それに僕も、セドリックならかわいがって育てられると思うんだ」
「馬鹿なことをおっしゃらないでください!」
思わずミランダは椅子から立ち上がり、声を荒らげてしまった。
(なんで!? こんなことになるはずじゃなかったのに!)
「だいたい、去年の夏にどうやって私たちが知り合えるんですか!? 私の恋人は――」
「――帝都で知り合った、金髪の旅人。彼はミランダの妊娠を知ることなく、帝都から立ち去った」
シリルは落ち着いた口調で、ミランダの恋人の『設定』を語る。
「でもそれは、ミランダが僕のためについた嘘だった。ミランダは帝国が王国に攻め入ると知って、心配になり僕に会いに来てくれた。僕はそんな君を愛するようになり、僕たちは二国が本格的に戦を始める前にお互いの想いを確かめてから、別れた。そのときにできたのが、セドリックだ――というシナリオだ」
「な、なんてことを……」
シリルのあんまりな嘘に目眩がしそうだが……いや、実はかなり真実に近いシナリオではないかとミランダは気づいた。
唯一真実と違うのは、シリルがあの夜のことを覚えていないという点だけ。
そこさえ除けば、セドリックが二人の間に生まれた王家の子で、シリルの迷惑にならないようにとミランダが架空の恋人を作り上げてレベッカの語ったのだという解釈になり、「ミランダ様はシリル殿下のことを想って嘘をついたのですね!」とレベッカすら納得させるストーリーに仕上がるのだ。
「でもそれじゃあ……セドリックは……」
「僕の実子であると皆に知らせる。もちろん、女王陛下にも」
「それは! 女王陛下や国民を欺くことになります!」
ミランダは必死に言い返すが……悲しいことに、これは嘘ではない。
セドリックは、シリルの子だ。リドベキア王家の血を継ぐ……王位継承者だ。
だがシリルとミランダは、その真実を偽っている。本当は旅人の男が父親だが、シリルの子と偽って……だが皆からすると、セドリックはシリルの子で……。
(あ、もう、わけがわからないわ……)
なにが真実で、なにが偽りなのか。
誰がどこまでを把握しているのか、誰にどこまでのことを言ってもいいのか、わからなくなってきた。