崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
 ミランダたちの乗る馬車は長い路程の末に、リドベキア城に到着した。
 城下街の街並みもメルデ帝都とは全く違ってミランダは圧倒されたが、それは王城もだった。

 魔術師たちが自由に空を飛ぶ国だけあり、メルデは城をはじめとした多くの建造物の背が高かった。
 魔術師たちにとって高い塔などは休憩場所にもなるし、もし高所の修理が必要でも魔術師の手にかかればそれほど苦ではないからだ。

 だがリドベキア王国は魔術師が生まれにくく、また昔ながらの伝統を大事にしているということもあり、王城はどっしり構えるような造りをしていた。その代わり王城の面積は非常に広く、城の東端から西端まで移動するだけでも一時間以上かかるのだとか。

 長い旅を終えた直後なので、ミランダたちは女王に謁見する前に湯を浴び、着替えもした。
 一足先に王城に来てシリルからの手紙を女王に渡していた魔術師のおかげで城の受け入れ体勢も万端らしく、「これから君とセドリックにはここで暮らしてもらう」とシリルに招かれた離宮にはミランダのためのドレスや宝飾品だけでなく、セドリックのためのベッドやおもちゃ、新品の赤ちゃん用バスタブなどまで揃っていた。

「こんなにたくさん用意してもらえるなんて……」
「君は僕の恋人で、王家の子を産んでくれた女性だからね。これくらい当然のことさ」

 着替えの後でミランダがたくさんのメイドたちにかしずかれてお茶を飲んでいると、同じく身仕度を調えたシリルがやってきた。

 これから女王に謁見するからか、彼は旅の道中に着ていたシンプルな服ではなくて豪華なボタンや勲章がたくさんついたジャケットを着ていた。スラックスもジャケットも、リドベキア王国軍の色と同じ青色で、シリルの金髪がよく映えていた。

 そんなシリルはミランダを見て、照れたように微笑む。

「……急いで作らせたものだけど、とてもよく似合っている。きれいだよ、ミランダ」
「えっ!? あ、ひゃ、ありがとうございます……」
「あはは、なんだい、そのかわいい声は」

 いきなり褒められたものだから、ミランダはひっくり返った声を上げてしまった。

 ミランダたちが到着する前に用意したというドレスはどれも美しく、その中でもメイドが着せてくれたこれは光沢のある青の布地が美しい夏用ドレスだった。

 また、隣の揺り籠にいるセドリックも、赤ちゃん用の青色の服を着ていた。シリルとセドリックはともかく、ミランダもリドベキア王国の青を纏えるというのが嬉しかった。

 周りにメイドたちがいるからか、シリルは仮の恋人ではなくて心から愛する人のようにミランダに接する。
 セドリックにも「僕のぼうやは、何を着ても素敵だね」とべた褒めで、父親に褒められたセドリックはご機嫌そうに「なぁー!」と声を上げて、メイドたちをほっこり笑顔にしていた。
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