崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
「いらっしゃい! ミランダ、どうぞこちらへ」
「ごきげんよう、女王陛下。お招きくださりありがとうございます」
セドリックを抱っこしたミランダが庭園に向かうと、先に待っていた女王がわざわざ立ち上がってガゼボから出て、ミランダたちのもとに来てくれた。
今日はからりとよく晴れた夏日で、ミランダは女王のお茶会に招かれていた。といっても女王以外に周りにいるのはメイドたちだけで、王配も今日は城外に出ているらしい。
ミランダはシリルから贈られたライムグリーンの軽やかなドレスを纏い、王城に来てから艶を増した栗色の髪を軽くまとめている。
まだぎこちないもののそろそろ王孫(仮)の生母としての貫禄がつきつつあるミランダを、女王は弾けるような笑みで迎えてくれた。
「セドくんも、ようこそ! うふふ、おばあちゃまもセド君に会いたかったわぁ!」
「公務でお忙しい中、ありがとうございます」
「なにを言いますか。日々の公務は、かわいい孫に会うために頑張って行っているのです。ふふ、さあセド君もこっちに」
既に女王の顔を覚えているようで、ミランダの腕の中のセドリックは女王を見るとあうあうと口を動かしながら手を伸ばしたので、女王のみならず周りのメイドたちもきゅーんときたように頬を緩ませていた。
女王がとても嬉しそうなので、せっかくなのでセドリックを渡して女王のそばにあるベビーベッドに寝かせてもらった。
彼女がシリルを産んだのがもう二十年以上前で、そのときも子どもの世話はメイドや乳母たちにほぼ任せていたはずなのに、赤ん坊を抱っこする手つきに危うさはなかった。
本日はシリルも王城を離れており、女王からのお茶のお誘いがかかったときも「遊びに行けばいいよ」と言ってもらえた。シリルはミランダを拘束するつもりがないようで、アルベック城だっていつでも帰っていいと言ってくれる。
だがそれは決してミランダに関心がないのではなくて、ミランダにもセドリックにも自由に暮らしてほしいという気遣いゆえなのだと、ミランダは知っていた。
生後四ヶ月を迎えようとしているセドリックは最近、身の回りのものに興味津々だ。
今も子育て経験があるというメイドが柔らかいおもちゃを見せるとそれをきらきらした目で見て、「貸して!」とばかりに手を伸ばしていた。
「……セド君の目は、青色なのね。お母さんに似たのね」
セドリックを見つめる女王が言ったので、紅茶の代わりに果実ジュースを飲んでいたミランダはうなずいた。
「そうです。将来はきっと美男子になると、シリル様はずっと言っていて……」
「ほほ、そうね。セド君が元気に育っているのももちろんだし……ミランダ、あなたも」
「……はい」
ミランダがかしこまると、こちらに視線をやった女王は微笑んだ。
「そう硬くならないで。……最初は、びっくりしたわ。我が息子ながらお堅いあの子が、帝国との戦争を終えたと思ったらこんなにかわいいお嬢さんと孫を連れて帰るなんて、思いもしなかったもの」
女王はメイドたちがいる前だから、セドリックがシリルの実の子であるという前提でしゃべっている。
とはいえ、出陣した息子が恋人と孫を連れて帰るというのは女王や王配にとっては本当に驚きだっただろうし……それは、シリルも同じだったことだろう。
「ごきげんよう、女王陛下。お招きくださりありがとうございます」
セドリックを抱っこしたミランダが庭園に向かうと、先に待っていた女王がわざわざ立ち上がってガゼボから出て、ミランダたちのもとに来てくれた。
今日はからりとよく晴れた夏日で、ミランダは女王のお茶会に招かれていた。といっても女王以外に周りにいるのはメイドたちだけで、王配も今日は城外に出ているらしい。
ミランダはシリルから贈られたライムグリーンの軽やかなドレスを纏い、王城に来てから艶を増した栗色の髪を軽くまとめている。
まだぎこちないもののそろそろ王孫(仮)の生母としての貫禄がつきつつあるミランダを、女王は弾けるような笑みで迎えてくれた。
「セドくんも、ようこそ! うふふ、おばあちゃまもセド君に会いたかったわぁ!」
「公務でお忙しい中、ありがとうございます」
「なにを言いますか。日々の公務は、かわいい孫に会うために頑張って行っているのです。ふふ、さあセド君もこっちに」
既に女王の顔を覚えているようで、ミランダの腕の中のセドリックは女王を見るとあうあうと口を動かしながら手を伸ばしたので、女王のみならず周りのメイドたちもきゅーんときたように頬を緩ませていた。
女王がとても嬉しそうなので、せっかくなのでセドリックを渡して女王のそばにあるベビーベッドに寝かせてもらった。
彼女がシリルを産んだのがもう二十年以上前で、そのときも子どもの世話はメイドや乳母たちにほぼ任せていたはずなのに、赤ん坊を抱っこする手つきに危うさはなかった。
本日はシリルも王城を離れており、女王からのお茶のお誘いがかかったときも「遊びに行けばいいよ」と言ってもらえた。シリルはミランダを拘束するつもりがないようで、アルベック城だっていつでも帰っていいと言ってくれる。
だがそれは決してミランダに関心がないのではなくて、ミランダにもセドリックにも自由に暮らしてほしいという気遣いゆえなのだと、ミランダは知っていた。
生後四ヶ月を迎えようとしているセドリックは最近、身の回りのものに興味津々だ。
今も子育て経験があるというメイドが柔らかいおもちゃを見せるとそれをきらきらした目で見て、「貸して!」とばかりに手を伸ばしていた。
「……セド君の目は、青色なのね。お母さんに似たのね」
セドリックを見つめる女王が言ったので、紅茶の代わりに果実ジュースを飲んでいたミランダはうなずいた。
「そうです。将来はきっと美男子になると、シリル様はずっと言っていて……」
「ほほ、そうね。セド君が元気に育っているのももちろんだし……ミランダ、あなたも」
「……はい」
ミランダがかしこまると、こちらに視線をやった女王は微笑んだ。
「そう硬くならないで。……最初は、びっくりしたわ。我が息子ながらお堅いあの子が、帝国との戦争を終えたと思ったらこんなにかわいいお嬢さんと孫を連れて帰るなんて、思いもしなかったもの」
女王はメイドたちがいる前だから、セドリックがシリルの実の子であるという前提でしゃべっている。
とはいえ、出陣した息子が恋人と孫を連れて帰るというのは女王や王配にとっては本当に驚きだっただろうし……それは、シリルも同じだったことだろう。