崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
女王から里帰りの許しをもらった数日後、シリルが公務に出かけるのを確認するなり、ミランダたちは旅支度を調えた。
「皆、準備はいい?」
「はい! ミランダ様とセドリック様のことは、この護衛隊長レベッカにお任せください!」
離宮の庭にてそう言うのは、黒い軍服姿のレベッカ。彼女の背後には、ミランダについて王国に渡った魔術師たちの姿がある。
魔道学院を卒業した彼女らには、いわゆる制服というものはない。だが女王の命令でミランダとセドリックの護衛を命じられた皆にも王国民としての服を与えるべきだろうということで、魔道学院の制服に似たデザインの軍服が与えられたのだった。
普段はレベッカのようにメイドだったり使用人だったりの仕事をしている彼らは黒の軍服を纏い、意欲に燃えている。
ミランダが予想したとおり皆はアルベック城に帰ると聞いて喜び、帰ったらあれをしよう、これをしよう、と盛り上がっていた。
ミランダと共に王国に来た兵士たちもいるが、残念ながら彼らは空を飛べない。だから魔術師たちが彼らから「仲間にこれを渡して」と手紙を預かり、アルベック城にいる兵士仲間に渡したりお土産を買ったりすることを約束していた。
……魔術師と、兵士。アルベック城でミランダの部下として共に過ごし、戦った日々で紡いだ絆は、たとえ離ればなれになっても決して途切れることはなかった。
里帰りのことはやはり、シリルには教えないことにした。一応彼は王配に連れられて郊外に出ているものの、万が一にも姿を見られないようにということで飛ぶルートを調節している。里帰りについては、女王が頃合いを見てシリルに教えるそうだ。
メイドがやってきて、セドリックをミランダに渡した。ミランダはセドリックを抱っこできるような特殊な形のリュックサックを身につけており、それに寝かされたセドリックはご機嫌そうににゃはは、と笑った。
「では皆、行きましょう!」
「はい!」
ミランダの声かけで、魔術師たちはふわりと宙に浮かんだ。
ミランダを中心に、護衛の魔術師たちがその周りを固める形で飛び上がると、見送りに来てくれたメイドや兵士たちが手を振ってくれた。ここからは見えないが、王城にある女王の執務室から女王も見送ってくれているかもしれない。
普段は風の抵抗が一番少なくて最速で飛べる前傾姿勢になるのだが、セドリックを抱っこしているミランダはあえて進行方向に背中を向けて寝椅子に寝転がっているかのように体を倒した。
これでセドリックにとって一番負担の少ない姿勢になるし、ミランダの周りはレベッカたちが飛んでいるのが安全面も問題ない。
魔術のおかげで風に吹かれることもないので、そよそよと温かな夏の日差しの下を飛びながらも、セドリックはにこにこ笑っている。
(いつかこの子も、魔術師としての能力を発揮するのかしら)
息子の柔らかいほっぺを撫でながら、ミランダは思う。
出産で疲弊したミランダに代わり、シリルがアルベック城の教会でセドリックの魔力測定を行ってくれた。そこで母親譲りの高い魔力を検知できたそうだから、いずれセドリックに魔術を教えることになりそうだ。
魔術師が少ないリドベキア王国の王子が、魔術師。
異例の事態になりそうだが……きっと認めてもらえる。
「皆、準備はいい?」
「はい! ミランダ様とセドリック様のことは、この護衛隊長レベッカにお任せください!」
離宮の庭にてそう言うのは、黒い軍服姿のレベッカ。彼女の背後には、ミランダについて王国に渡った魔術師たちの姿がある。
魔道学院を卒業した彼女らには、いわゆる制服というものはない。だが女王の命令でミランダとセドリックの護衛を命じられた皆にも王国民としての服を与えるべきだろうということで、魔道学院の制服に似たデザインの軍服が与えられたのだった。
普段はレベッカのようにメイドだったり使用人だったりの仕事をしている彼らは黒の軍服を纏い、意欲に燃えている。
ミランダが予想したとおり皆はアルベック城に帰ると聞いて喜び、帰ったらあれをしよう、これをしよう、と盛り上がっていた。
ミランダと共に王国に来た兵士たちもいるが、残念ながら彼らは空を飛べない。だから魔術師たちが彼らから「仲間にこれを渡して」と手紙を預かり、アルベック城にいる兵士仲間に渡したりお土産を買ったりすることを約束していた。
……魔術師と、兵士。アルベック城でミランダの部下として共に過ごし、戦った日々で紡いだ絆は、たとえ離ればなれになっても決して途切れることはなかった。
里帰りのことはやはり、シリルには教えないことにした。一応彼は王配に連れられて郊外に出ているものの、万が一にも姿を見られないようにということで飛ぶルートを調節している。里帰りについては、女王が頃合いを見てシリルに教えるそうだ。
メイドがやってきて、セドリックをミランダに渡した。ミランダはセドリックを抱っこできるような特殊な形のリュックサックを身につけており、それに寝かされたセドリックはご機嫌そうににゃはは、と笑った。
「では皆、行きましょう!」
「はい!」
ミランダの声かけで、魔術師たちはふわりと宙に浮かんだ。
ミランダを中心に、護衛の魔術師たちがその周りを固める形で飛び上がると、見送りに来てくれたメイドや兵士たちが手を振ってくれた。ここからは見えないが、王城にある女王の執務室から女王も見送ってくれているかもしれない。
普段は風の抵抗が一番少なくて最速で飛べる前傾姿勢になるのだが、セドリックを抱っこしているミランダはあえて進行方向に背中を向けて寝椅子に寝転がっているかのように体を倒した。
これでセドリックにとって一番負担の少ない姿勢になるし、ミランダの周りはレベッカたちが飛んでいるのが安全面も問題ない。
魔術のおかげで風に吹かれることもないので、そよそよと温かな夏の日差しの下を飛びながらも、セドリックはにこにこ笑っている。
(いつかこの子も、魔術師としての能力を発揮するのかしら)
息子の柔らかいほっぺを撫でながら、ミランダは思う。
出産で疲弊したミランダに代わり、シリルがアルベック城の教会でセドリックの魔力測定を行ってくれた。そこで母親譲りの高い魔力を検知できたそうだから、いずれセドリックに魔術を教えることになりそうだ。
魔術師が少ないリドベキア王国の王子が、魔術師。
異例の事態になりそうだが……きっと認めてもらえる。